2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740086
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
坂川 博宣 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (60348810)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 相転移 / 相分離界面 / Gibbs測度 / 自由エネルギー |
Research Abstract |
例えば0度における水と氷といったような相転移が起きている状況で現れる異なる二相を分離する境界面の確率モデルのひとつで近年活発に研究がなされているものとして∇φモデルが挙げられる。今年度は関連するモデルとしてd次元正方格子上のガウス型のΔφモデルを取り上げ、2つの種類の自己ポテンシャルを加えた場合における系の自由エネルギーについて調べ、以下の結果を得た。1)δ-ピンニングと呼ばれる場を高さ0のレベルに引き付けるような弱い自己ポテンシャルを加えた場合を考える。1次元においてはCaravenna-Deuschel(2008)によってピンニングの強さによって場の局在/非局在の相転移が起こることが示されていたが、4次元以上ではピンニングの強さによらず常に場が局在化することを証明した。2、3次元については未解決である。2)Δφモデルに対し場の上下に壁が置かれ搖動が制限された状況での挙動について考え、壁の高さを無限大とする極限を取った場合の自由エネルギーの漸近挙動に関する評価を得た。物理的にはΔφモデルでは系のエネルギーが雑にいって界面の曲率から定まり、これは細胞膜のモデルに対応することが知られている。このモデルは∇φモデルが持つような単純なMarkov 性を備えておらず以上の結果は物理的にも数学的にも意義のあるものである。これらは論文を専門誌(Journal of Statistical Physics)に投稿し掲載受理となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数の相を分離する境界面、いわゆる界面に関連したいくつかの確率モデルを取り上げ、その漸近挙動に関する研究を通して相分離界面に関する物理現象の数学的な解析を目指すことが主要な研究目的であった。今年度はこれに関連して確率界面モデルの一つであるΔφモデルに対し、部分的ではあるが自己ポテンシャルを加えた場合における場の挙動に関する結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続いていくつか確率界面モデルの漸近挙動に関する解析を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、旅費の部分で当初参加予定だった研究集会への参加が都合により不可能となったため、次年度への繰り越しが生じた。次年度は繰り越し分と合わせ、当初の計画通り旅費および図書等の消耗品に使用する予定である。
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