2011 Fiscal Year Research-status Report
区分的に滑らかな係数を持つ偏微分方程式の解の更なる解析,及び逆問題への応用
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23740110
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
永安 聖 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 講師 (90455684)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 安定性評価 / 偏微分方程式 |
Research Abstract |
この研究の目的の一つは, あるパラメータを含むような偏微分方程式が与えられたとき, そのパラメータが偏微分方程式の解にどのように影響するのかを調べることである. 今年度は, 振動数情報を含むある方程式に対する係数決定逆問題の安定性が, 振動数を大きくしたときにどうなるかについて調べた. 方程式[Δ+ k2 q(x)]u(x)=0に対し, 観測情報から係数q(x)を決定する係数決定逆問題について考える. ここでは観測情報を, この方程式に対するDirichlet-to-Neumann写像によって定式化することにする. 又, 方程式中のkが振動数に相当する. よってここで調べるべきことは, 振動数kを大きくしたときに係数決定逆問題の安定性がどうなるかということである. まず一般に, この種の逆問題の安定性は余り良くないことが知られている. しかしながら, 振動数kを大きくすると安定性が良くなることが数値的に確認されている(Colton-Haddar-Piana, 2003). よって, 我々の目標はこのことを数学的に示すことである, ということもできる. この問題に対し, 王振男氏(国立台湾大学)とG. Uhlmann氏(ワシントン大)との共同研究によって, ある安定性評価を得ることができた. そしてその評価は, 振動数を大きくすると安定性も良くなる, ということを示唆していると思われる評価である. しかしながら, まだ評価のoptimalityについては得られていない. このoptimalityを得ることはこれからの課題である. この種のoptimalityを得るためには, 具体的な場合について計算をできる限り精密に行うのが有効であると思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の目的の一つは, あるパラメータを含むような偏微分方程式が与えられたとき, そのパラメータが偏微分方程式の解にどのように影響するのかを調べることである. 今年度調べたのは, 偏微分方程式の解ではなく偏微分方程式の逆問題の安定性評価ではあるが, その安定性評価のパラメータ依存性についてはある程度は調べられたと思われる. しかし, 安定性評価のoptimalityがまだ得られていない点は, 今後解決すべきものである. 区分的に滑らかな係数を持つ偏微分方程式の解の解析についてはまだ計算途中であるが, 引き続き計算を続ければ下からの評価に関する何らかの情報は得られるのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度扱った係数決定逆問題の安定性評価に関し, 残っている大きな問題の一つはoptimalityであるが, これについては具体例をできる限り精密に計算して調べざるを得ないだろうと思われる. 又, 今年度得た定理では, 観測情報をDirichlet-to-Neumann写像によって定式化したため, 作用素Δ+ k2 qのkernelはtrivialであるという仮定を置いていた. しかし, 観測情報をCauchyデータ, 即ちDirichletデータとNeumannデータのペアで定式化することにより, kernelがtrivialであるという仮定は外すことができると思われる. 或いは, Cheng-Nakamura (2001)のアイデアを使うことにより, 観測回数を有限回にすることもできると思われる. 一方で, 元々考えていた問題は, 区分的に滑らかな関数を係数とする偏微分方程式の解の解析, 特に介在物同士の距離が偏微分方程式の解に与える影響についてであった. これについて詳しく調べるためには, 現状では具体例をできる限り精密に計算するより他ないと思われる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
この研究では, 共同研究者との議論が重要な役割を果たす. 特に今年度同様, 王振男氏(国立台湾大学教授)や, 中村玄氏(北海道大学教授)との議論は研究を大きく進展させると思われる. しかしながら, いずれも兵庫県からは遠く, 飛行機を使っての移動となるため, 次年度の研究費も殆どを交通費・旅費に使わざるを得ない. 又, 研究の際には偏微分方程式論に関する文献も必要になると思われる.
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Research Products
(1 results)