2012 Fiscal Year Research-status Report
羃零型1階線型および半線型偏微分方程式におけるジュブレイ漸近理論
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23740114
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
日比野 正樹 名城大学, 理工学部, 准教授 (10441461)
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Keywords | 関数方程式論 / 複素解析 / 発散級数 / 総和可能性 / 解析接続 |
Research Abstract |
2複素変数羃零型と呼ばれる、原点を特異点とする1階線型偏微分方程式(しかもその中で最も一般的な形の方程式)において、その発散羃級数解(以下、「発散解」と略記)がBorel総和可能(すなわち、開きの大きさがπより大きい角領域上で正則な解で、発散解をGevrey型の漸近展開に持つもの、が存在する)となるために方程式の係数が満たすべき条件を与えること、を最終目標として研究を行いました。 結果として、未だ予想の段階ではありますが、発散解がBorel総和可能となるための条件を、①方程式の係数に対する解の解析接続可能性;②係数の偏導関数に対する或る種の増大(または減少)条件;の形で与えることに成功しました。(正確には、方程式の係数が①、②の2つの条件を満たせば発散解がBorel総和可能である、という予想に到達しました。)前年度までの研究で①の条件は既に得られていましたが、②の条件は得られていませんでした。過去の研究により、②の条件を得るためには、「対象となる方程式に形式的Borel変換を施して1階線型偏微分作用素を主要部とする合成積方程式を導き、さらに特性曲線の方法を用いて、得られた合成積方程式を積分方程式に変換する」という解析を行う必要があることは分かっていたため、今年度はその解析を成功させることを目標として研究を行いました。結果として研究は成功し、②の条件を予想するという目標を達成しました。 今年度はさらに、上記の予想が、或る特殊な(但し、これまでには扱われていない)タイプの方程式に対しては正しいことを、逐次近似法を用いて証明することに成功しました。また「2013日本数学会年会」において上記の研究成果を「或る1階線型偏微分方程式に対する発散羃級数解の総和可能性について」という題目で発表致しました(13.研究発表の項を参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、今年度中に【研究実績の概要】の項で述べた①、②の条件を予想し、さらにはその予想が正しいことの証明まで完結させる予定でした。しかしながら実際には、研究成果は条件を予想することに留まりました。 その理由としては(1)前年度同様、所属機関の学部再編に関連して研究代表者が多くの会議に出席する必要があったこと;(2)学部再編に関連して、新カリキュラムに対応した教育関連の教科書執筆(共著)を研究代表者が依頼されたこと;(3)所属機関の学科教員の急病により、研究代表者の担当講義数が年度途中より急遽増加したこと;が挙げられます。研究そのものは目標達成に向けて少しずつ進んでおりますが、研究を遂行する時間が前年度に比べさらに少なくなってしまったことが、予定より研究の達成度が遅れてしまった最大の理由だと考えております。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は、これまでの研究を続け、目標の達成を目指します。具体的には、今年度までの研究で得られた予想が正しいことの証明を試みます。 「今年度の研究で導かれた積分方程式の解が、予想された条件の下で、或る方向に無限遠方にまで解析接続可能かつ指数関数増大度を持つ」ことの証明ができれば、発散解のBorel総和可能性が証明されたことになり、目標は達成されます。【研究実績の概要】の項で述べたとおり、或る特殊なタイプの方程式に対しては、逐次近似法を用いて証明に成功しておりますので、一般の方程式に対しても同じ逐次近似法によって証明できるのではないかと期待しております。但し、対象の積分方程式をこれまで以上に精密に扱う必要がありますので、過去の研究成果を参考にして研究を続け、目標に到達できればと考えております。 上記の研究は、方程式を線型のものに限って係数を一般化するという方向で行われていますが、方程式を非線型化するという研究の方向もあります。先に述べた通り、当面は線型方程式に限って研究を進めて行きますが、研究の進捗状況によっては(特に係数の一般化が難しい場合)、係数の一般化は犠牲にして非線型方程式を扱うことも検討しております。既に半線型の羃零型方程式に対しては発散解の一意存在が研究代表者によって証明されており、その結果、半線型方程式に対しても、この発散解をGevrey型の漸近展開に持つような正則解の存在問題を考えることが可能になっています。ただ、非線型方程式に適用可能なGevrey漸近展開の一般理論が未だ完全な形で構築されていないため、この方向で研究を行う場合には、まずは方程式を離れ、漸近展開理論の再構築を行う必要があります。方程式の非線型化を行う際には、この理論構築にも取り組む予定です。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度・今年度ともに、研究打ち合わせや学会参加をする時間を取ることができず、「収支状況報告書」の「次年度使用額」が0円にならないという結果となりました。次年度は、今年度の研究成果をさらに発展させ、公表できる形にまとめ、積極的に発表していく予定でおります。 「次年度使用額」および25年度に請求する研究費の多くは、上記の発表のための旅費と、書籍の購入に使用致します。特に研究発表については、海外での発表を計画しており、研究費の5割ほどを、その発表のための旅費として使用する予定です。
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