2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740119
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
竹山 美宏 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (60375392)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 量子KZ方程式 / 多重ゼータ値 / 二重アフィンヘッケ代数 |
Research Abstract |
今年度の研究では、昨年度までに行っていた量子KZ方程式の研究との関連で、多重ゼータ値の q 類似が満たす関係式を考察し、それが制限和公式と呼ばれる線形関係式を満たすことを証明した。本研究の主な研究対象である量子KZ方程式は、微分極限においてKZ方程式に移行する。共形場理論で扱われるKZ方程式には、その係数としてリー代数の普遍包絡環の元が現れるが、それを一般の非可換な元とした方程式を考える。この一般化されたKZ方程式の解のモノドロミーは、リーマンゼータ関数の特殊値の拡張である多重ゼータ値で記述できる。一般化されたKZ方程式のモノドロミーの性質から、多重ゼータ値の関係式が得られる。以上のように、多重ゼータ値の関係式は、KZ方程式の解空間の構造と密接な関係がある。本研究の主な研究対象である量子KZ方程式は、KZ方程式の q 類似と見なせる。多重ゼータ値の q 類似は金子・黒川・若山および Zhao によって定義されているが、それと量子KZ方程式の解空間との関係はまだ十分に分かっていない。しかしこれまでの研究で、特殊関数論の手法で証明される多重ゼータ値の関係式の多くは、q 類似にも拡張できることが分かっている。今年度の成果もその一部として位置づけられており、多重ゼータ値の q類似の性質と量子KZ方程式の解空間の構造との間に、何らかの関係があると期待できる。 今年度に計画していた境界つき量子KZ方程式の解の積分表示の構成については、桑野による境界つきXXZ模型の相関関数の積分表示の構成を参考に、準備的な計算を行った。特に、境界からの寄与を記述する K 行列が対角型ではない場合や、一般の A 型の対称性をもつ模型に対応する場合への拡張について考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの研究の継続課題として、多重ゼータ値の q 類似の新たな関係式を得ることはできた。本研究の課題として今年度に予定していた積分表示解の拡張については、まだ準備的な計算の域を出ていないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究の経験から、境界つき量子KZ方程式の解の積分表示については、既存の結果を拡張することがそれほど易しくないと思われる。そこで別の観点からのアプローチとして、二重アフィンヘッケ代数の表現論を使って、境界つき量子KZ方程式そのものの代数的構造の解析および特殊解の構成を試みようと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に予定していた出張は 3月末に実施されており、支払いは次年度4月としたため生じたものであり、当初の計画通り研究実施した。次年度の研究では、二重アフィンヘッケ代数の表現論を使った計算を行う予定である。この研鑽では、複雑な微分(もしくは差分)作用素を扱う必要があり、これを効率良く進めるために、数式処理ソフトの導入などの環境を整えたい。また、国内外の研究集会などに参加し、関連分野の研究者と情報交換を行う予定である。
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