2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740120
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大野 博道 信州大学, 工学部, 准教授 (90554585)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流(ハンガリー) |
Research Abstract |
今年度の研究では,新しい完全な正作用素値測度として,いくつかの例を作り出した.これまでに知られている完全な正作用素値測度として,MUBやSIC-POVMが知られているが,その存在は特別な次元でしか証明されていない.今回構成した完全な正作用素値測度はMUBやSIC-POVMに比べれば,構成するためのベクトルの個数が多くなってはしまっているが,MUBやSIC-POVMと違い,どのような次元であっても構成できることがわかった. また,SIC-POVMの一般化である条件付きSIC-POVMについての考察も行ってきた.SIC-POVMが環に対する完全な正作用素値測度を作るのに対し,条件付きSIC-POVMは部分空間に対する完全な正作用素値測度を作るものであり,量子系上の状態の情報の一部が既知である場合,残りの未知な情報を得るためにもっとも効率のよい方法になっている. さらに,これらの研究と関連したCPT写像,UCPT写像についても考察を行ってきた.CPT写像は量子系上の状態と対応をしているため,量子系の研究の基礎となる大事な研究である.またUCPT写像はクリフォード群を考えるために必要な自己同型写像を含むものであり,今年度の研究ではこの自己同型写像から作られるUCPT写像の部分凸集合とUCPT写像の違いについて考察を行った.この結果,上記の部分凸集合に含まれないUCPT写像の端点は,次元が低い場合であればEBC写像と呼ばれるセパラブル状態と対応するUCPT写像にはならないことがわかった.しかし,次元が高い場合にはまだ問題が残っており,今後の研究課題になっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究の目標の一つであった,これまで知られているMUBやSIC-POVMとは異なる完全な正作用素値測度の構成についていくつかの例を作ることができている.ただし,使用するベクトルの個数が多く,次元が高い場合にはより少ないベクトルで済むような改良をする必要性は残っている. また,UCPT写像と自己同型写像の作る部分凸集合の関係についても,次元が低い場合には多くのことが明らかになった.これについても次元が高い場合については考察すべき点が残っており,来年度の課題となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の研究では,今年度の研究で未解決であった,新しい完全な正作用素値測度を改良し,より少ないベクトルで構成し直す研究と,次元が高いときのUCPT写像と自己同型写像の作る部分凸集合の関係についての研究を引き続き行っていく. さらに条件付きSIC-POVMについても研究を続けていく.これまでの先行研究で判明している条件付きSIC-POVMが存在する部分空間は,非常に特殊なものしか見つかっていない.今後の研究では,条件付きSIC-POVMが存在するための条件やその例などについて調べていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度の研究では,ハンガリーのブダペスト大学のPetz教授と研究協力していく予定である.そのため,ハンガリーへの出張を行う予定であり,これが研究費の大きな割合を占めている.また,研究の成果発表や情報収集を行ったり,他の研究者との研究に関する議論を行うため、国内の学会や研究集会などへの出張を多く行う予定である.さらに研究を行うための,量子情報理論や量子力学,作用素環論・作用素論に関する専門書の購入を予定している. また,当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が生じた.
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Research Products
(3 results)