2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23740120
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大野 博道 信州大学, 工学部, 准教授 (90554585)
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Keywords | 条件付きSIC-POVM / 国際情報交換 |
Research Abstract |
完全正作用素値測度とは,ある量子状態を観測したときに,その量子状態の情報を完全に知ることができる正作用素値測度のことである.完全な正作用素値測度の例として,MUB(mutually unbiased bases)やSIC-POVM(symmetric informationally complete positive operator valued measure)があるが,その存在はヒルベルト空間の次元が特別な場合しか証明されていない. 本研究ではヒルベルト空間上の線形作用素のなす空間全体を考えるのではなく,*演算について閉じている部分空間を考え,その空間における完全正作用素値測度に関する結果を得ることができた.部分空間に制限した理由は,部分空間を考えることで,ある量子状態の一部の情報が既知であるときに,その量子状態の情報を完全に知ることができる正作用素値測度を考えることができるようになるからである.上記のMUBやSIC-POVMでは,すでに既知の情報を再び得ることになってしまうので,そこに無駄が生じてしまう. これまでに行われた研究では,いくつかの特殊な部分空間で無駄のない完全正作用素値測度がつくられるということが知られていたが,本研究ではそのような完全正作用素値測度がつくられるための必要条件を導き出し,それにより上記のような完全正作用素値測度が存在しない例をつくることができた. 完全正作用素値測度の研究では,具体例を挙げて存在を示す方法が一般的で,存在しないことを示すのは簡単ではなく,そのような証明も数少ない.本研究で得られた結果は,その意味でも意義のある結果であるといえる.
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