2011 Fiscal Year Research-status Report
リーマン多様体上のデルタ型磁場を持つシュレディンガー作用素の解析
Project/Area Number |
23740122
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
峯 拓矢 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90378597)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | アハラノフ・ボーム効果 / 双曲平面上の量子力学 / ベーテ・ゾンマーフェルト予想 / ランダムシュレディンガー作用素 |
Research Abstract |
本年度の主結果は次の4つにまとめられる。(1)双曲平面における定数磁場とアハラノフ・ボーム磁場を併せ持つ系におけるランダウ準位の存在条件を決定した。さらにその系として、ユークリッド平面におけるアハラノフ・キャッシャー型定理の双曲平面の場合での一般化を与えた。これは、超対称性理論における対称性の破れを表す零状態に関する具体的な存在条件を与えるものである。(2)ユークリッド平面において2点にアハラノフ・ボーム型磁場を持つシュレディンガー作用素が楕円座標で表される厳密解を持つための条件を調べ、さらにその応用として2次元ユニタリゲージを持つシュレディンガー型作用素を定義し、その厳密解を与えた。この系は、外村彰らによる実験で用いられたトーラス内に閉じ込められた磁場を平面で切断することで得られるが、得られた厳密解を実験と比較することで実験データのより精密な検証を行うことを目的とする。(3)2次元ユークリッド平面における周期的ポテンシャルを持つシュレディンガー作用素のスペクトルに関するベーテ・ゾンマーフェルト予想(スペクトル・ギャップが有限個になるという予想)に関して、従来得られていた結果の精密化・および証明の簡略化を行った。これは固体物理で基礎となるスペクトルのバンド構造に関してより精密な情報を与えるものであり、理論上も応用上も極めて重要な結果と言える。(4)2次元ユークリッド平面におけるポワソン点過程に従って分布するランダムなポテンシャルを持つシュレディンガー作用素のスペクトルに関する未解決問題に対して、その完全な解決を与えた。このモデルはランダム・シュレディンガー作用素の理論における基本モデルの一つであり、そのスペクトルに関しても予想は既にあったのだが、今までに技術的な理由で証明が欠けていた部分を全く別の手法で解決した画期的な結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった双曲平面上のシュレディンガー作用素の解析については順調に成果を上げることが出来た。さらに、研究の過程でユークリッド平面上の2点にアハラノフ・ボーム型磁場を持つシュレディンガー作用素、ユークリッド平面上の周期ポテンシャルやポワソン型ランダムポテンシャルを持つシュレディンガー作用素に関する重要な結果が得られ、予想以上の成果を上げることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
ユークリッド平面上で2点にアハラノフ・ボーム型磁場を持つシュレディンガー作用素の理論は2点を焦点に持つ楕円上で考えた場合にはほぼ完成を見たが、全平面上の作用素としてみた場合にはまだ固有関数の完全性が示されておらず、課題を残している。この点について、チェコ共和国におけるこの主題の権威であるストヴィチェック氏と連絡を取りながら研究を進めたい。さらに、点相互作用がランダムになる場合のアンダーソン局在の問題についても扱いたい。ドラス・マクリス・ピュレによる先行結果を境界3つ組の理論を用いて整理し、その一般化を行うことによって、様々な場合に適用可能な一般論を作り出すのが理想である。これについてもチェコ共和国のエクスナー氏らと連携を図り、研究を進めて行きたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
チェコ共和国への出張の他、日本数学会などの様々な国内研究集会出席、および研究打ち合わせのために出張旅費を使用する。また、研究に必要な文献を購入するために物品費を使用する。
|
Research Products
(2 results)