2012 Fiscal Year Research-status Report
リーマン多様体上のデルタ型磁場を持つシュレディンガー作用素の解析
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23740122
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
峯 拓矢 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90378597)
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Keywords | アハラノフ・ボーム効果 / ランダム・シュレディンガー作用素 / 特殊函数 / スペクトル幾何 |
Research Abstract |
本年度の主要な結果は以下の通りである。(1)3次元空間内の太さ0のリング内に閉じ込められた磁束πのアハラノフ・ボーム型磁場を持つシュレディンガー作用素に対し、扁球座標および回転楕円体波動関数を用いて一般固有関数を具体的に構成し、数式処理ソフトを用いて数値計算を行った。「磁束π」という条件はこの手法で方程式を解くために必要な数学的条件であるが、アハラノフ・ボーム効果を実証した外村彰らの実験で用いられた超伝導体トーラス中の磁束も(磁束の量子化により)πであり、その意味では極めて重要な場合の解が得られたと言える。さらに、一般の直交曲線座標を被覆写像とみなした場合に被覆変換群の表現に付随するラプラシアンはアハラノフ・ボーム型シュレディンガー作用素の一般化とみなされるが、二・三次元の場合にその分類についての研究を行った。(2)ランダム・シュレディンガー作用素の固有関数のフーリエ空間上での挙動についての数値計算を行った。離散型2次元アンダーソン・モデルを有限な範囲で打ち切って行列計算を行い、ランダム性が強い場合には配位空間では局在が起こるがフーリエ空間では固有関数が広がりを持つこと(これはアンダーソン局在と不確定性原理から期待される事実)、およびランダム性が弱い場合にフーリエ空間において固有関数のある種の局在が観察されるが配位空間では広がりを持つことを確かめた。ランダム系における高エネルギー領域での散乱状態の存在(Mobility edge の問題)は未解決の難問であり、ここで観察された弱ランダム領域におけるフーリエ空間での局在は、問題解決への糸口となることが期待される。また、ランダム・シュレディンガー作用素をフーリエ空間で考える際にはポテンシャル項の(緩増加超関数としての)フーリエ変換との合成積が現れるが、ランダム・ポテンシャルのフーリエ変換の滑らかさについての研究も併せて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元ユークリッド空間中のリング内の磁場に対するシュレディンガー作用素の一般固有関数が具体的の構成できるという事実は、昨年度に得た2次元の場合の結果から自然に期待されるものであり、期待通りの成果が得られたと言える。ランダム系に対する結果は現在のところ数値的な結果ではあるが、今後の数学的研究の方向を示唆する興味深いものでもある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画は以下の通りである。(1)昨年度研究した2次元ユークリッド平面内の2点にアハラノフ・ボーム型磁場を持つモデル、および本年度に研究した3次元ユークリッド空間内のリングに磁場を持つモデルそれぞれについて、固有関数の漸近解析を行い、散乱理論を構築する。楕円座標、長球・扁球座標に対するラプラシアンの固有関数展開は多母数スペクトル解析(Multi-parameter spectral analysis)に属する問題であるが、作用素が連続スペクトルを持つ場合には現在のところ十分に整備されているとは言えない状況である。池部らによる一般固有関数展開の理論、および McLachlan, Meixner-Schafke らの特殊函数の理論を詳細に研究し、この系における一般固有関数展開を導き、その応用として散乱振幅の具体的表示を計算する。可能であればより一般的な多母数スペクトル問題について一般固有関数展開定理を導きたい。(2)ランダム・シュレディンガー作用素のフーリエ空間での挙動についての研究をさらに進展させる。アンダーソンモデルにおける各シングル・サイトポテンシャルの係数がガウス分布に従う時には、ポテンシャルのフーリエ変換がホワイト・ノイズとなることが知られている。それをレゾルベント展開の式に代入すれば各項は多重Wiener積分となるため、多重Wiener積分に関する公式(エルミート展開など)がレゾルベント評価を改善することが期待される。そういった評価式を用いて弱ランダム領域でのランダム・シュレディンガー作用素のスペクトルの性質について研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
日本数学会などの国内研究集会、QMath12 などの国外研究集会への出席、および国内外の研究者との研究打ち合わせのために出張旅費を使用する。また、研究に必要な文献を購入するために物品費を使用する。
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Research Products
(3 results)