2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740125
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
村田 実貴生 青山学院大学, 理工学部, 助教 (60447365)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 関数方程式論 / 解析学 |
Research Abstract |
第2パンルヴェ方程式のq差分類似であるqパンルヴェ方程式に対応する超離散方程式を提出した。その超離散方程式の2つの任意定数を持つ厳密解を構成した。パンルヴェ方程式やqパンルヴェ方程式においては任意定数を持つ解の構成は困難であるが、超離散パンルヴェ方程式においてそのことに成功した。将来的には超離散パンルヴェ方程式とqパンルヴェ方程式の対応関係を考えることにより、qパンルヴェ方程式やパンルヴェ方程式の任意定数を持つ解の構成に役立つことが期待される。つまりパンルヴェ超越関数の解明に役立つものと考えられる。微分方程式に対して超離散化を行う系統的な方法を確立した。その方法は1階の微分方程式や反応拡散方程式に適用できるものである。1成分の反応拡散系として知られているAllen-Cahn方程式についてこの手法で超離散方程式を構成した。そして元の微分方程式と同様の性質を持つ定常解や進行波解などの厳密解を構成した。また、2成分の反応拡散系であるGray-Scottモデルについてこの手法を用いて超離散モデルを構成した。元のモデルと同じように自己複製パターンやパルスの分裂や対消滅の生じるようなセル・オートマトンを得ることに成功した。特に、この超離散モデルは時空パターンがシェルピンスキー三角形を描くことで知られるエレメンタリー・セル・オートマトンのルール90と呼ばれるものを含むことが分かった。このことは提案した超離散化を行う系統的な方法が、元の微分方程式の性質を保存していることを示しており、他の方程式についてもこの手法で元の微分方程式と同様の性質をもつ超離散方程式を構成できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微分方程式に対して超離散化を行う系統的な方法を確立した。常微分方程式であるパンルヴェ方程式、1成分の反応拡散系として知られているAllen-Cahn方程式、および2成分の反応拡散系であるGray-Scottモデルに対して、同様の性質をもつ超離散方程式を構成することに成功した。同じ現象を記述すると考えられる異なる種類の関数方程式を系統的に構築することに成功した。また超離散方程式の一般論の構築に向けて前進したと考えられる。今後は関数方程式間の解の関係を詳細に解析するとともに、より多くの具体例に対して提案した手法が有効であることを検証することで、目的が達成するものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、微分方程式を超離散化することにより、さまざまな新しい超離散方程式を構成し、それを解析する。具体的な対象としては、連立の偏微分方程式系で表わされるBZ反応のモデルとして知られるオレゴネータやFitzHugh-Nagumo方程式に対して、対応する超離散方程式で表わされる数理モデルを構成する。特に,値域を有限個に制限してセル・オートマトンにする。定常解や進行波解といった基本的な解を構成する。解の挙動を調べ微分方程式の解と同様の挙動を示すことを検証する。あるいは微分方程式の解と異なる挙動を示すかもしれないのでそのような解を発見する。特徴的な解については可能な限り解を厳密に記述し、可能ならば厳密解を構成する。数理モデルで記述される元の現象に対して考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数式処理・研究論文執筆・情報収集発信を行なう上で計算機環境の設備は必須である。そのために、計算機および周辺機器、ソフトウェアが必要である。研究に関する資料収集および研究打合せのために、また成果報告により自身の研究結果を他の研究者に有効に活用してもらうために、国内・海外旅費が必要である。また、専門図書による情報収集は数学の研究において基礎となるものである。数学においては多くの文献資料を取り扱うことになるので、それらを整理して有効に活用する必要がある。この資料整理の費用を謝金に計上する。さらに、専門家による知識の提供は、研究対象に対して新しい視点を与え、研究の更なる発展に欠かせないものであるので、このための費用を謝金に計上する。そして、「その他」に分類される諸経費は、研究活動の円滑な推進のために欠かせない経費である。
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