2011 Fiscal Year Research-status Report
同値関係から生成されるヘッケ・フォンノイマン環の解析と保型形式への応用について
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23740132
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
青井 久 立命館大学, 理工学部, 准教授 (90396276)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | フォンノイマン環 / ヘッケ環 / 同値関係 / 保型形式 |
Research Abstract |
研究初年度である本年度は,ヘッケ・フォンノイマン環の構造解析に重点を置いて解析を行った.具体的には,東京学芸大学の山ノ内氏との共同研究によって,同値関係に関するヘッケ対に対する「Schlichting completion」の理論を構築することに成功した.これは,既に知られている一般の群のヘッケ対の理論の拡張である.この結果により,任意のヘッケ対に対して,「良い」性質を持つヘッケ対が自然に構築できることが示された.今後は,この性質を持つ「Schlichting pair」と呼ばれるヘッケ対に対象を絞って解析を行うことで,対応するヘッケ・フォンノイマン環の新たな理論を構築できる見込みがあり,引き続き研究を続けている.一方,同値関係から決まるヘッケ・フォンノイマン環のヘッケ作用素による表現について研究を進めた結果,同値関係特有の問題が発生することが判明した.それは,群の各元に対応する同値関係の「典型的な元」を定めることの困難さが原因である.これについては,これまでの同値関係の理論を駆使することで解決できる見込みがあり,現在研究を進めている.理論の具現化については,数学ソフトウェアによる可視化という観点から,福岡大学の濱田氏とは定期的に交流を行なった.濱田氏は,長らく続けていた KNOPPIX/Math プロジェクトを MathLibre として活動を続けている.それに関わる数学ソフトウェア環境の構築という点から,口頭発表を通じた意見交換を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヘッケフォンノイマン環の構造解析については山ノ内氏との共同研究を順調に進められていると考えいる.数学ソフトウェアの応用については,土台となる計算機環境に見込みがついた.ヘッケ作用素の表現に関する理論については,初年度の解析によってある程度見込みがついたことから,次年度中に確立することによって,研究期間内で最終目標としている保型形式への応用へと進めることが可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目標である,ヘッケ作用素によるヘッケ・フォンノイマン環の表現について最優先で研究を進める意向である.また,東京学芸大学の山ノ内氏との共同研究として,「Schlichting pair」の理論は引き続き進める計画である.理論の具現化については,整数論に関わる機能も豊富に持っている汎用数式処理ソフト Sage に重点を置いて,理論の可視化を図りたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は手続きの遅れや,参加を予定していた研究集会が中止になるなどの事由により,研究費の執行配分は当初の計画と異なるものとなった.しかしながら,直接経費全体で見ると,予定の約9割を執行したこと,初年度に目標としていた研究環境の整備を行なうことに成功したことを踏まえると,次年度の研究費は当初の予定通りに使用する計画である.
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