2012 Fiscal Year Research-status Report
同値関係から生成されるヘッケ・フォンノイマン環の解析と保型形式への応用について
Project/Area Number |
23740132
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
青井 久 立命館大学, 理工学部, 准教授 (90396276)
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Keywords | フォンノイマン環 / ヘッケ環 / 同値関係 / 保型形式 |
Research Abstract |
研究2年目である本年度は,昨年度に引き続きヘッケフォンノイマン環の構造解析の進展に重視した研究を行なった.具体的には,東京学芸大学の山ノ内氏と共同で研究を行なっている,新たに構築した「Schlichting completion」の理論に関して,asymptotic range で展開していた議論を essential range へと適用することに成功した.これにより,同値関係の典型例である,群測度構成法から得られるヘッケ対において,asymptotic range が「潰れて」いるものに対しても群の情報が得られることになった.それに伴い,1-cocycle の極小性によるヘッケ対の特徴付けも得られることとなった.この成果はヘッケフォンノイマン環に関する新たな側面からの解析の切り口になることが期待できる. ヘッケ作用素に関する理論については,昨年度の研究で判明した,同値関係の典型的な元を定めることの困難さに取り組んでいる状態である.しかしながら,上述の解析で得られた理論をうまく適用することで今年度には部分的にでも結果を出すことができると考えている. 理論の具現化については,MathLibre にも収録されている,数式処理システム Sage を中心に展開を試みた.今年度行なったものは,主に学部教育レベルの理論の具現化が中心であったが,近年のバージョンで充実された3次元描画に関する手法は進展させることができ,同値関係に関連した理論の視覚化の土台は整ったと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヘッケフォンノイマン環の構造解析や数学ソフトウェアへの応用についてはほぼ当初の予定通り進められていると考えているが,ヘッケ作用素に関する保型形式に関わる理論についてはその困難さから当初よりもやや遅れが出ていると考えている.しかしながら,次年度移行で対応できる程度のものと判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画からやや遅れている,ヘッケ作用素に関わる保型形式の理論の展開に重きを置いて研究を進めたい.山ノ内氏と共同で研究を進めている,ヘッケフォンノイマン環の構造解析については,現在得られた結果により,理論の構築がある程度完成できたと考えているので,その成果を様々な場で発表することで研究者との交流を図りたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引き続き,当初の予定に沿って使用する予定である.昨年度は学内業務と研究集会が競合することで,例年参加している研究集会にほとんど出ることができなかったが,今年度は予定通り参加できる見込みである.また,研究環境の整備については現状ではほぼ完成している.機器の故障がない限り,購入品は書籍および消耗品に限ると考えている.
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