2011 Fiscal Year Research-status Report
日本酒醸造過程を表現する数理モデルの導出と仮似変分不等式による解析
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23740135
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
村瀬 勇介 名城大学, 理工学部, 助教 (80546771)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形解析 / 仮似変分不等式 / 偏微分方程式 / 劣微分 / 日本酒醸造過程 / 数値計算 / 数理モデル |
Research Abstract |
本年度では、まず日本酒醸造過程について書籍等から得られる情報を基に化学反応速度論等の立場から数理モデリングを行い、さらにいくつかの数値的結果から必要と思われる改良を加えた。特に菌やアルコール等によって醸造が阻害される事を表現する際に、より現象に近い形式に出来るよう非線形性を高めた形式に変更している。このように導出された数理モデリングに対して、その都度数値実験を進めた。ただし研究計画でも述べたとおり、提唱したモデリングをそのまま数値的に解析することは困難なため、計算が困難となる部分のみをロジスティック方程式型に置き換えて計算を行っている。計算には多くの定数や関数の構築が必要であったため、実データをもとに実際の現象に近い結果が得られる設定を構築し、実際にある程度現象に適合した結果が得られることを確認した。さらに、その設定の一部を醸造に適しない設定に変更した場合には、数値結果が醸造に失敗した状況に該当する値となることも確認した。これらの結果により、導出した数理モデルはある程度現象を表現することに成功していると考えられる。加えて数学的な理論の構築に関する研究も進めた。本研究では最終的に醸造のコントロールが目的の一つとして挙げられている。これを達成するため、数理モデルのうち本質的な項目のみで構成される方程式系に対する最適制御問題の解決を行った。この方法を利用することで、今回提唱した数理モデルに対しても最適制御の存在が証明できると考えられる。さらに、放物型仮似変分不等式に対応する摂動項付き発展方程式の可解性についても検証を行った。これまでに知られている発展方程式と同等の枠組みの上で、摂動にある種の条件を設定することで解が存在することを示した。これにより数理モデルの可解性が保証できると期待されているが、一方で条件の改善の余地も残されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、日本酒醸造過程において現れる化学反応に着目し、現象を表現する数理モデルの導出を行い、数値実験により現象を一定程度表現できていることが確認できた。ただし、ここでは数理モデルの一部をロジスティック型で置き換えているため、近似方法を変えることでより良い結果が得られる可能性が残されている。数値計算の手法については現時点では複数台コンピュータによる並列処理は最良策ではないと判断したため、単一コンピュータ内での並列処理に方針を転換して計算を行った。これにより先の研究においてさらに並列化を行う際のスキーム構築についていくつかの効率的な方針を確立することが出来た。さらに当該年度内では予定していなかった数学的な抽象理論の構築に関し、放物型仮似変分不等式に対応する摂動項付き発展方程式の可解性等についての結果を得ることが出来た。解を得るための条件は未だ改善の余地があるが、改善の方法についても目処を付けることが出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在研究を進めている放物型仮似変分不等式に対応する摂動項付き発展方程式の可解性のための条件をさらに改善するとともに、時間発展する摂動に対する結果が得られるかを考察する。また、この理論を応用して導出した数理モデルの数学的な可解性を議論するとともに、その上で解の性質を調べることで限症状意味を持つ解が存在するかどうか調査する。この様な解の存在が保証できれば、最適制御問題等の解決によって現象のコントロールが可能となると考えられる。また、今回提唱した数理モデルも多次元制限集合を持つため、数値結果の更なる改善には方程式の置き換えをしない数値計算手法の構成が必要となる。従って、多次元制限集合を持つ仮似変分不等式の数値計算手法についての考察を行う。研究が一定の進展を見た場合は、工学系の研究者及び酒造会社と連携を取り、商品の開発が可能になるように研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は数値計算に必要な機材の調達が主な用途となったため、数学に関する各種書籍・資料の入手が十分に行えなかった。従って、本年度では数学に関する書籍等の入手を主な用途とし、非線形解析学・数値解析関連書籍の購入におよそ200千円を充当する。また、研究発表や調査等に必要な旅費におよそ200千円、更なる並列計算の高度化の為の準備と消耗品の購入のためにおよそ100千円を充当する。
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Research Products
(8 results)