2012 Fiscal Year Research-status Report
日本酒醸造過程を表現する数理モデルの導出と仮似変分不等式による解析
Project/Area Number |
23740135
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
村瀬 勇介 名城大学, 理工学部, 助教 (80546771)
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Keywords | 非線形解析 / 仮似変分不等式 / 偏微分方程式 / 日本酒醸造現象 |
Research Abstract |
仮似変分不等式が対応する偏微分方程式系として提唱した数理モデリングに対する離散近似について考察し、現在ワークステーションによる数値シミュレーションを進めている。現時点では多くのパターンに対する計算を進めたいため、PCクラスタは構成せずマルチスレッド技法を利用した並列計算によって計算の効率化を図っている。この数値計算結果によって現象を記述するモデリングとして妥当と思われる部分と妥当では無いと思われる部分が明確になってきた。妥当ではないと思われる部分については改善の余地が残っているため引き続き改善を進めている。 解析学的見地からは当該モデリングの可解性の検証を行い、解の存在定理を得た。本年度では当該モデルに非斉次ディリクレ境界条件を設定した場合と、第3種境界条件を設定した場合のそれぞれについて検証を行っている。この研究結果によって提唱した数理モデリングの解の存在が保証されたため、解に対する数学的性質についての検証や制御に関する検証が可能になった上、現象を表現する数理モデリングとしてのある種の正当性が担保されたといえる。本結果については平成25年度中に論文として発表する予定である。 さらに仮似変分不等式の一般論として機能する抽象非線形発展方程式の初期値問題の可解性についての議論も行った。今回は時間依存しない摂動項を持つ劣微分作用素を用いた抽象発展方程式を議論の対象とし、ある程度の評価を持つ摂動項であるならば少なくとも一つ解が存在することを示した。本結果は時間依存する摂動項を持つ場合における議論などの土台になるものであり、数理モデリングを改善した際の可解性検証において重要な役割を果たすと期待できる。本結果については論文として発表済みであり、平成25年度末、もしくは平成26年度初頭に刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
導出した数理モデリングに対してある種の近似となるロジスティック型偏微分方程式系を提唱し、その近似方程式の数値計算を行い、数理モデリングの解が存在した場合の解の挙動について検証を進め、ある程度減少を記述できていることを確認した。ただし、いくつかの項目では減少と傾向が一致しない点が見られるため、その点の改善策について検証を進めている。また、もとの数理モデリングを直接離散近似する方法についても検証が進んでおり、数値計算のためのプログラム構築を進展させている。 数値計算結果から解の存在が予想できたため、実際に仮似変分不等式の理論を利用して数理モデリングの解の存在について考察し、非斉次ディリクレ境界条件を設定した際の固定時間区間上における解の存在定理を得た。これにより解析的にも解の存在性が保証されたため、解の性質の解析や最適制御問題にアプローチすることが可能となった。このような研究項目は当初平成25年度に実施する予定のものであり、予定より早く結果が得られていることになる。 また、これまでの仮似変分不等式の理論の拡張も検討しており、時間依存しない摂動項を持つ仮似変分不等式に対応した抽象非線形発展方程式の初期値問題の解の存在定理を得た。この結果を更に拡張させることでさらに時間依存する摂動項を持つタイプの問題についても解析が可能となることが期待できる。この理論の進展は、更に詳細な情報を取り入れた形式の数理モデリングを構成した際の解析に役立つと考えられる。この研究項目は当初の計画には含まれておらず、予定以上の結果が得られているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では基本的に数理モデリングに対して非斉次ディリクレ境界条件を設定して解析を行っているが、現象上及び解析学適用性があるため、今後は第3種境界条件を設定した場合の解析も並行して進めていく。また、未知関数に依存する時間区間内での解の存在性を得ることが求められているため、解の一意性やその他の性質について検証を進める必要がある。本件については解の存在性に関する解析が完了し次第進めていくこととする。 数値計算の面では、これまで用いていたある種の近似方程式系の数値計算を完了し、もとの数理モデリングの数値計算を進めていく。また、現象の表現性について改善を行うため、これまでに設定していたタイムスケールを上回る設定下での数値計算を優先的に進めていく予定である。これによって計算時間は従来に比べて長くなることが予想されるため、ワークステーションによるPCクラスタの構築を進め、計算処理の円滑化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
数値計算の回数とパターンがこれまでと比較して多くなることが予想されるため、データの集積や共有を円滑に行うためにNASを導入する予定である。この機材の購入費用として本年度直接経費のおよそ30%を割り当てる。また、数理モデリングの解析を進める上で必要になる理論に関連する非線形解析関連の文献・書籍の購入費用に直接経費のおよそ30%を割り当てる。加えて各種研究集会や学会での発表と情報交換を行うため、旅費に直接経費のおよそ40%を割り当てる予定である。
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Research Products
(10 results)