2013 Fiscal Year Research-status Report
日本酒醸造過程を表現する数理モデルの導出と仮似変分不等式による解析
Project/Area Number |
23740135
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
村瀬 勇介 名城大学, 理工学部, 助教 (80546771)
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Keywords | 非線形解析 / 発展方程式 / 仮似変分不等式 / 偏微分方程式 / 現象数理 |
Research Abstract |
これまでに導出した日本酒醸造現象を記述する数理モデルに対して、いくつかの項に対して補正を施したモデルについて考察した。その中でも構造が単純な製麹過程(醸造の第1段階)に対応する部分に着目して解析を進めた。その結果、熱方程式には第3種境界条件、それ以外の方程式には斉次ノイマン境界条件を課した初期値境界値問題に対する解の存在性が得られたので、学術論文 "Mathematical model for the process of brewing Japanese sake and its analysis" (Adv. Math. Sci. Appl., Vol. 23, No. 1, pp. 297-317, (2013)) 及び、研究集会等における口頭発表にて発表を行った。本論文の結果によって導出した数理モデルの数学的可解性が保証され、解を調べることで現象の様子が表現できているか検証することが可能となった。 ここまでの研究により、数理モデルの全段階に対する解析について展望が開けた。いくらか調整が必要になる可能性はあるが、今回用いた解析手法とおよそ同等の方法によって全段階に対する解析が可能となることが期待される。さらに、解に対する制御問題や漸近挙動等を研究することで、モデルの現象再現性や未来予測に役立てられると期待できる。 加えて、仮似変分不等式の抽象論の枠組みから本問題の可解性について検討することができ、仮似変分不等式の抽象論が具体的な方程式系の解析に応用できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
導出した数理モデルの可解性について、第1段階に関して証明を完了することができた。同様の方法によって他の段階における可解性も証明できる見通しであり、解の存在性の議論については十分に進展していると考えられる。この得られた結果は、当初計画の研究内容とおよそ一致しており、進展の度合いはおおむね順調であると評価して良いと考える。 数値計算については、これまでは可解性を示した形式とは違う状態で進めていたため、再度可解性が示された形式で数値計算を行う必要がある。ただし、これまでに数値計算で用いてきた処理の手順や並列化技術は同様に利用可能であるから、研究計画の変更は必要とならない。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初計画の通り、本モデルに対する最適制御問題についての研究を進める。特に、熱方程式に関した境界条件に現れる関数のみをコントロールパラメータとして、方程式の終了時間に関する評価を含むコスト汎関数を最小化する問題を対象とする予定である。この様なコスト汎関数を設定する理由は、実際の醸造現象における重要事項と最適制御問題における優先項目を一致させるためである。これに加え、当該モデルに対する数値計算を行う。これにより、現象の再現度の検証と醸造への応用可能性についての検討を行う予定である。 研究が順調に進展した場合は、他の段階に対応するモデルに関しても同様の解析を進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)