2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740144
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 賢幸 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (50589207)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
23年度の主な研究成果としては以下があげられる。最も重要な研究成果は、人類が今までに取得した最も深い、X線・可視・赤外データのある、Chandra Deep Field Southでz=1.61の銀河群を発見したことである。これはこのような高赤方偏移で発見された銀河群・団の中で、最も質量の小さいもので、現在の宇宙における典型的な銀河団の祖先であると期待される。そのような形成初期にあると思われる天体を詳細に調べると、銀河群銀河は驚くほど進化の進んだ段階にあることがわかった。銀河群銀河のほとんどは星形成をしていない早期型銀河で、近傍宇宙の銀河群・銀河団と非常に似た性質を持っていた。これは銀河進化の環境依存性が、このような初期においてすでに成り立っていたことを意味する。この内容は論文として投稿中である(Tanaka et al. PASJ submitted)。本研究の目標であった高赤方偏移銀河団の重要性を再確認させられる結果であった。そこで、より遠方のz=2.16にある原始銀河団PKS1138の非常に深い近赤外分光をすばる望遠鏡を用いて行った。データはすでに整整済みで、現在、解析途中である。また、測光データから銀河の物理サイズが、同じ赤方偏移のフィールド銀河と比べて大きいという示唆も得られ論文として出版した(Zirm, Toft, Tanaka 2012, ApJ, 744, 181)。その他、密接に関連した論文として、大規模分光サーベイのzCOSMOSデータから活動銀河核(AGN)の割合が遠方の銀河群ほど高いことを明らかにしたこと、また高赤方偏移においても、AGNを分光データから効率よく選択する全く新しい方法を開発したことがあげられる。これらは3本の論文となっていて23年度の9-11月に受理されたが、出版が24年度になるので今回の論文リストには入っていないことを付記しておく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に述べたz=1.61の銀河群の発見は大変興味深く、この高赤方偏移で、かつ小質量の銀河群でも銀河の性質に明らかな環境依存性があるという、驚くべき結果が得られたことは評価できるであろう。今後近赤外分光を行うことで、より深い知見が得られることが期待される。最遠方銀河団の発見までは現在まだ至っていないが、これは多少の運も必要な部分で、今後も根気強く探査を続ける予定である。統計的な研究のベースとなる、様々なディープフィールドにおける銀河群・銀河団カタログ作りも、海外の共同研究者と進めていて、24年度には数本の論文になるのではないかと期待している。総合すると初年度の進み具合としてはまずまずであると言っていいだろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずはz=1.61銀河群の深い近赤外分光観測を行う。そのためのすばる望遠鏡への観測提案は提出済みである。また、Max Planckにいる共同研究者の協力で、2012年後半にコミッショニングが行われる新しい近赤外多天体IFU分光器である、KMOSのGT時間を使って観測できないか調整中である。「研究実績の概要」で述べた結果はまだ出版されていないが、共同研究者を通じて、来る6月に開かれるアメリカ天文学会において招待講演を依頼されている。その他、24年度は銀河関係の研究会がいくつか開かれるので、積極的な出席・発表を心がける。それと平行して、現在解析が進んでいるz=2.16の原始銀河団の分光データを調べる。現時点での初期解析では、星形成をしていない銀河が存在することが示唆されていて、それが本当であれば興味深い結果である。このような遠方の原始銀河団における深い近赤外分光観測はほとんど例がないため、タイムリーに解析を進める必要がある。24年度中にすばる望遠鏡に新しい広視野カメラ、Hyper Suprime-Camが搭載される予定で、それを用いた大規模サーベイを現在の天文コミュニティーが計画している。私はこの計画に深く関わっていて、もしサーベイが走り出せば統計的な遠方銀河群・銀河団サンプルを作る絶好のデータとなるであろう。こういった本研究と関連した近未来プロジェクトにも、積極的に関わっていきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使い道としては、共同研究に必要な旅費と、研究会へ参加するための旅費が大部分を占めることになる。また、論文の出版費もある程度かかると予想している。研究費のほとんどはこの旅費と論文出版費に充てる予定である。
|
-
-
-
-
[Journal Article] Early-type Galaxies at z ~ 1.3. IV. Scaling Relations in Different Environments2012
Author(s)
Raichoor, Mei, Stanford, Holden, Nakata, Rosati, Shankar, Tanaka, Ford, Huertas-Company, Illingworth, Kodama, Postman, Rettura, Blakeslee, Demarco, Jee, White
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 745
Pages: id.130
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Early-type Galaxies at z ~ 1.3. II. Masses and Ages of Early-type Galaxies in Different Environments and Their Dependence on Stellar Population Model Assumptions2011
Author(s)
Raichoor, Nakata, Stanford, Holden, Rettura, Huertas-Company, Postman, Rosati, Blakeslee, Demarco, Eisenhardt, Illingworth, Jee, Kodama, Tanaka, White
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 732
Pages: id.12
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Galaxies in X-Ray Groups. I. Robust Membership Assignment and the Impact of Group Environments on Quenching2011
Author(s)
George, Leauthaud, BUndy, Finoguenov, Tinker, Lin, Mei, Kneib, Aussel, Behroozi, Busha, Capak, Coccato, Covone, Faure, Fiorenza, Ilbert, Le Floch, Koekemoer, Tanaka, Wechsler, Wolk
-
Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 742
Pages: id.125
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-