2013 Fiscal Year Research-status Report
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23740144
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
田中 賢幸 国立天文台, ハワイ観測所, 特任助教 (50589207)
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Keywords | 銀河団 / 銀河形成・進化 |
Research Abstract |
平成25年度の最も大きな成果は、赤方偏移2.16にある形成途中の銀河団を詳細に調べ、論文として発表したことである (Tanaka et al. 2013, ApJ, 772, 113)。 すばる望遠鏡を用いて8時間積分という長時間の近赤外スペクトルを取得し、こういった形成途中の銀河団にすでに星形成活動を止めた、赤い銀河が存在することを初めて分光的に確認した。 さらに、そういった銀河のスペクトルを足し合わせることで、CaII H+K という古い銀河にとりわけ強い吸収線をわずかながら見ることができた。 これが本物の検出ならば初めての検出であるが、まだ確証を得るには至っていない。 より深いデータを取得すべく観測を続けているが、残念ながら今のところ天気に恵まれずデータが取れていないのが現状である。 関連して、以前に発見した赤方偏移1.62の銀河団をHerschel宇宙望遠鏡を用いて観測し、銀河の星形成活動を詳細に調べ、銀河団中心ではやはり星形成を止めた銀河が多いことを確認した (Santos, Altieri, Tanaka et al. 2014, MNRAS, 438, 2565)。 以前、他の研究で銀河団中心で星形成活動がとりわけ活発になっていると指摘されたが、そういう傾向はみられなかった。 近傍から赤方偏移1.6までにわたって、銀河団の星形成活動をより系統的に調べた研究代表者らの研究からも、そのような活発な星形成は確認されていない (Ziparo, ... Tanaka, et al. 2013, MNRAS, 434, 3089 と 2014, MNRAS, 437, 458)。 以前の研究は銀河団一つに基づいたもので、研究代表者らの行ったような統計的な研究がやはり重要であることを改めて確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の銀河団探査のメインの手法は、非常に深いX線データと可視・近赤外データを組み合わせて用いる、というものである。 現在、人類が持っている最も深いX線データのある Chandra Deep Field South で銀河団探査を行い、全ての天体をカタログ化した。 そこで発見した最遠方銀河団は我々がすでに出版した赤方偏移1.61のものであった (Tanaka et al. 2013, PASJ, 65, 18)が、このカタログは他のフィールドでは見つからないような小質量の銀河団を多く含んでおり、非常にユニークなカタログである。 現在、論文を投稿し査読中となっている。 このように最遠方銀河団の発見にはまだ至らないが、赤方偏移1.5を超えるような遠方で少しずつサンプルを増やしつつある。 これは統計的な研究には欠かせないもので、実際、このカタログは銀河団の星形成活動を系統的に調べた我々の研究において活用され (Ziparo, ... Tanaka, et al. 2013, MNRAS, 434, 3089 と 2014, MNRAS, 437, 458)、銀河団一つに基づいた過去の研究に疑問を投げかける結果が得られた。 本研究の主題である統計解析がやはり非常に重要であることを再確認した。 これらを総合すると、現在までおおむね順調に進展してきているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
Chandra Deep Field South でさらに深いX線データを取得するプログラムが最近になって始まった。 これによりX線のデータがほぼ2倍になる予定で、当然遠方銀河団の発見も期待される。 まだ観測が始まっていないプログラムではあるが、共同研究者と共にこのデータでさらなる探査を目論んでいる。 技術的にはすでに確立した解析をするだけなので、困難な部分は無い。 もし、遠方銀河団候補天体が発見できれば、速やかに分光追観測を提案する予定である。 これと並行して、平成25年度末から始まったすばるの次世代カメラHyper Suprime-Camを用いた大規模サーベイデータによる遠方銀河団探査にも力を入れる予定である。 これはすでに観測も始まった堅実なプログラムで、本研究の力点はこちらにシフトすることになると思われる。 このサーベイは広くて深いデータを提供し、遠方銀河団探査には非常によいデータとなる。 現在、このデータから銀河団を特定するコードを開発中で、実際のデータに走らせ弱い重力レンズ解析から見つかった銀河団とのマッチングなど初期解析を行っている。 コード自体は実用レベルに近づいているので、サーベイからまとまったデータが出てき次第、速やかに解析をする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残高が少ないので無理に使用せず、来年度に繰り越したほうが有効活用できるため。 旅費や論文出版費の一部として使用する計画である。
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