2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740149
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥居 和史 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (20444383)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 電波天文学 / 銀河系中心部 / 星間物質 / 磁場 |
Research Abstract |
本研究は銀河系中心部の広域分子雲観測を実施し、銀河系中心部の磁気浮上ループの全容の解明を目指すものである。本年度は、NANTEN2望遠鏡を用いたCO J=1-0輝線による銀河系中心部のCentral Molecular Zone (CMZ)の全域(8平方度)観測を実施した。続いて同望遠鏡を用いた12CO J=2-1輝線による同領域の観測を完了した。これらのデータを用い、銀河面から垂直方向に切り立った成分を複数個同定した。これはCMZにおける分子雲ハローの存在を示す始めての結果であり、特に質量の大きい4成分は磁気浮上ループであると考えられる。この結果を2011年10月17日~20日にドイツのハイデルベルクで開催された国際研究会 "THE EMERGING, MULTI-WAVELENGTH VIEW OF THE GALACTIC CENTRE ENVIRONMENT"において口頭発表を行った。また、このCO J=2-1輝線データを用いて、銀河系中心から高さ100pcの位置にMorrisらによって発見されたDouble Helix Nebula (DHN)に付随する分子雲の存在を、世界で始めて明らかにした。この分子雲のより詳細な構造を調べるため、アメリカのCSO望遠鏡、オーストラリアのMopra望遠鏡によるCO J=1-0, 2-1輝線の詳細観測(角度分解能33秒角)を実施した。以上の結果は現在論文投稿準備中である。また、銀河系中心部の磁場強度を世界で始めて直接観測により明らかにするため、アメリカのEVLA干渉計を用いた偏光観測を提案し受理されたが、今年度はEVLAの偏光観測システムが未完成であったため、偏光観測が実施されなかった。またすでに得られている銀河系中心部2kpcのOH吸収線のデータの基礎解析を実施しこれを完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、1)NANTEN2による銀河系中心部広域に対するCO(J=1-0)の詳細観測、2)NANTEN2による銀河系中心部広域に対するCO(J=2-1)の詳細観測、3)磁気浮上ループの3次元分布の解明、4)銀河系中心部の磁場強度の直接測定の4点の実施を計画しているが、1)と2)に関しては部分的(8平方度)に達成した。これは全体のおよそ3割に相当する。今後さらに加速して実施する予定であり順調と言える。またすでに得られたデータからも査読論文として3本の投稿を準備中である。3)は研究を行うためのデータの基礎解析を完了した。また4)の観測は実施できなかったものの、その原因は望遠鏡の不具合によるものであり、また観測提案は実際にEVLA干渉計により受理されていることから、次回の公募時での観測採択および観測実施の可能性は高いと考えられる。以上から本研究はおおむね計画どおりに進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、1)NANTEN2による銀河系中心部広域に対するCO(J=1-0)の詳細観測、2)NANTEN2による銀河系中心部広域に対するCO(J=2-1)の詳細観測、3)磁気浮上ループの3次元分布の解明、4)銀河系中心部の磁場強度の直接測定、の4点について実施する。1)および2)に関しては、NANTEN2望遠鏡はすでに運用可能な状態にあり実現可能性は高い。また、これら観測と平行してすでに得られたデータに対する科学解析を実施し、これを論文として投稿する。また本年度までで銀河系中心部の銀経負方向と中心のCMZに対しては分子雲ループの同定を完了した。今後は過去のなんてん望遠鏡によって得られたCO J=1-0輝線データも加えて、銀経正方向の分子雲ループの同定を進めることを予定している。3)はすでにOH吸収線のデータの基礎解析を終了したため、今後は科学解析を行う。4)については、来年度ふたたびEVLA干渉計に対し観測提案を提出することを予定している。基礎解析が完了したOH吸収線のデータを詳しく見ることで、改めて観測領域の選定を行い観測提案の質の向上を目指す。また、DHNに付随する分子雲に対するさらなる詳細観測をCSO, Mopra等を用いて実施する。DHNは磁気浮上ループとは異なる起源を持つと考えられるが、銀河系中心部の磁場構造を理解するためには必要不可欠な天体であり、その点で磁気浮上ループの解明と共通する目的を持つ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
来年度は主に観測および研究打ち合わせ、学会参加に対する旅費として使用する。観測はNANTEN望遠鏡、CSO望遠鏡、Mopra望遠鏡、EVLA望遠鏡を予定している。研究打ち合わせは九州大学の町田真美助教、千葉大学の松元亮治教授、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のMark Morris教授を予定いしてる。また現時点で計3本の投稿論文を執筆中であり、この出版費用としても使用する。また、物品として新たな解析用ノート型計算機の購入と、その他として解析用ソフトウェアIDLのライセンスの更新を行う。
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