2011 Fiscal Year Research-status Report
銀河ガス円盤の磁気流体数値実験:磁気浮上ループ・渦状腕衝撃波による粒子加速の寄与
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23740153
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 真美 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50455200)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 理論天文学 / 銀河ガス円盤 / 磁気乱流 / 粒子加速 |
Research Abstract |
銀河ガス円盤中での磁場の重要性を明らかにする目的で3次元磁気流体数値実験を行った。これまでの研究から、銀河磁場の増幅・維持機構は銀河ガス円盤中で生じる磁気回転不安定性による磁場増幅と、パーカー不安定性による銀河ハロー部への磁束流出によって準平衡状態が維持されている事を指摘してきた。しかし、過去の研究では赤道面対称性を仮定していたため、磁束流出の成長率が低くなる可能性があった。そこで、本年度は銀河ガス円盤全体を数値計算領域に含む大局的な磁気流体数値実験を行い、磁場の成長率、大局的な磁場構造を調べた。 初期磁場構造は平衡状態にある弱い方位角方向磁場を仮定し、赤道面に対して対称な磁場(ネットフラックスが有る場合)と赤道面に対して反対称な磁場(ネットフラックスが無い場合)を考えた。その結果、ネットフラックスの有無に依らず、銀河ガス円盤内部の弱い種磁場は磁気回転不安定性によって増幅される事がわかった。増幅された磁場が空間平均でガス圧の10%以上まで増幅されると銀河ガス円盤表面の磁束はパーカー不安定性によってハロー部に流出する事が示された。増幅と流出の時間間隔は中心からの距離に依存し、各半径での回転周期の10倍程度になる事もわかった。この周期は磁気回転不安定性による磁場増幅のタイムスケールに依存している。また、銀河ガス円盤から流出する磁束は全領域で平均すると方位角方向正側の極性を持つとすると、流出直後の銀河円盤内部の平均磁束の向きは負方向の極性を持つ。この負方向の磁束が増幅し、次の周期では負方向の磁束が流出し正方向の磁束が銀河円盤内部に残存する事がわかった。この機構は太陽ダイナモと似た結果を示している。 得られた磁場分布と密度分布を元に、中心から8kpcの位置から観測した全天の回転量度分布図を作成した。その結果を観測と比較した所、おおよその構造は再現できる事を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は、初めに先行研究では無視されていた銀河ガス円盤の鉛直方向構造にも焦点を当てた数値計算を行った。その結果、先行研究同様に磁気回転不安定性の成長による磁場増幅とパーカー不安定性による磁束流出のつり合いで、磁場強度が準平衡状態に保たれている事を示した。更にこれまで仮定していた赤道面対称性を外す事によって、鉛直方向正側と負側では磁場の極性が異なる状態が周期的に表れる事、磁束流出のタイミングが赤道面に対して対称では無い事等が新たに解った。そこで、磁束流出に関する詳細な解析を行う事を先行し、その結果をまとめた論文を学術雑誌に投稿中である。 これらの数値計算によって銀河磁場の大局構造が得られたため、磁場分布と密度分布から回転量度分布を計算して実際の電波観測結果と比較し、銀河磁場の大局構造の成因とその初期磁場依存性についての議論を深めた。当初計画では、銀河ガス分布の多温度構造を考慮する事が新たな知見に必須であると考えていたが、その前段階の研究最中により詳細な解析を必要とする課題が浮かび上がったため、そちらの解析を優先する事とした。 分子冷却等を考慮するための近似関数の取り扱い、1万度を超える高温ガスでの冷却項の取り扱いに関しては既に数値計算コードの改訂に取り組んでおり、テスト計算を行う準備をしている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
銀河ガス円盤は10Kの分子ガス、100-1000Kの中性水素ガスと電離ガス、100万度を超える高温プラズマが入り乱れた多温度構造をしていると考えられている。本年度は低温ガスを取り扱うための冷却項を組み込んだ数値計算を行い、低温高密度ガスと磁場構造の関係性を調べる予定である。渦巻き銀河全体を含む半径30kpc程度、鉛直方向に10kpcの計算領域を方位角方向400メッシュ、動径方向128メッシュ、鉛直方向600メッシュ程度の解像度の数値計算を行う予定である。しかし、本研究計画で取り扱う100Kのガスのスケールハイトは50pc程度であるため、冷却項を含めると鉛直方向に非常に薄いガス円盤が形成される可能性が高い。従って先の分解能では計算が破たんする場合には、渦巻き銀河の中心近傍のみに焦点を当てた数値計算を行う事とする。これらの数値計算では、初期磁場構造として方位角方向磁場のみを持つ場合、方位角方向磁場のみであるがネットフラックスが0である場合、鉛直方向に一様な磁場に貫かれた場合など、初期磁場構造に対する依存性を調べる。 同時に等温近似した場合の銀河ガス円盤の数値計算も行う。この数値計算では、円盤部の温度を1000K、ハローを100万Kと仮定し、ガス円盤の進化と磁場の進化を調べる予定である。等温計算の場合には、薄いガス円盤が初期条件となるため、渦巻き銀河の中心領域に焦点を当てた計算を行う。等温計算も冷却入り計算と同様、初期磁場構造の影響を調べるために、複数の初期磁場構造の数値計算を行う。この結果と冷却項を考慮した数値計算結果を調べる事により、ガスの多温度構造が磁場強度や磁場構造へ与える影響を明らかにする。更に得られた数値計算結果をもとに、回転量度分布、シンクロトロン放射強度分布などを求め、観測と比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費(20万円):口頭発表で使用するノートPCを購入する。国内旅費(40万円):国内で行われる学会に2回程度参加し研究成果を発表する予定である。また、研究協力者との研究打ち合わせを複数回行うために研究協力者を九州大学に招へいするための旅費にあてる。海外旅費(30万円):研究成果を公表するため、また他国の研究者と議論し研究内容を深めるために国際研究会に参加し研究成果の発表を行う。その他(20万円):研究成果の公表のため、論文雑誌に論文を投稿しその出版費として20万円程度を見込んでいる。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Molecular Loops in the Galactic Center ― The Physical Condition in the Whole Loops2011
Author(s)
Kudo, N.; Torii, K.; Machida, M.; Takahashi, K.; Nozawa, S.; Yamamoto, H.; Okuda, T.; Kawamura, A.; Mizuno, N.; Onishi, T.; Matsumoto, R.; Fukui, Y.
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Journal Title
Astronomical Society of the Pacific
Volume: 439
Pages: 69-69
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