2014 Fiscal Year Research-status Report
銀河ガス円盤の磁気流体数値実験:磁気浮上ループ・渦状腕衝撃波による粒子加速の寄与
Project/Area Number |
23740153
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
町田 真美 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50455200)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
Keywords | 理論天文学 / 銀河ガス円盤 / 磁気流体数値実験 / 磁気乱流 / 観測的可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河磁場の増幅、維持機構や銀河磁場の大局構造を調べる目的で、銀河ガス円盤全体を計算領域に含む大局的3次元磁気流体数値実験を行っている。その結果、初期の弱い磁場は平均で数マイクロガウスに増幅され、数十億年維持される事、中心から10kpcより内側では、磁場の大局構図は緩いスパイラル構造を形成する事がわかっている。本年度は、数値実験結果から得られた物理量を元に、実際に観測される放射の再現を試みた。 具体的には、数値計算結果を一つの系外銀河とし、回転量度(RM)やシンクロトロン放射強度、磁場の偏波角などを求め、見込み角に対する依存性を調べた。その結果、見込み角が70度未満(face-on)の場合には、BSS様の磁場構造が観測され、その構造は赤道面付近の構造を強く反映している事がわかった。一方、見込み角が70度以上(edege-on)の場合には、全体としては方位角方向磁場ば卓越しているが、中心軸近傍、鉛直方向にX字型の磁場構造が見られる事がわかった。この構造は、中心近傍から噴出するアウトフローによって形成されていた。 銀河ガス円盤は、数十Kの分子ガスと数千Kの中性水素、数万Kの高温プラズマで構成されている。そのような構造を再現するために、数値計算に分子冷却の効果を付け加えた数値計算も行った。分子冷却のタイムスケールは回転のタイムスケールと比べて早いので、冷却項は陰的に解いている。冷却関数は7千Kから1万KまではInoue et al.(2006)、1万K以上ではSutherland & Dopita (1993)で用いられているものを参照している。その結果、赤道面に7千Kの中性水素ガス円盤が形成されたが、2kpcより内側は高温円盤のまま残っていた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の結果を踏まえて、冷却項は陰的解法を用いる形で数値計算を行った。その結果、低温ガスと高温プラズマの共存する実際の銀河に近い環境を再現する事に成功した。低温ガス円盤が形成される時に磁束を保存したまま収縮するが、同時にパーカー不安定性によって磁束を鉛直方向に効率よく噴出する事で、低温ガス円盤部の磁気圧はガス圧とほぼ等しい状態を維持する事もわかった。観測では、磁気圧とガス圧は同程度という仮定で磁場強度を算出するが、この仮定はおおよそ正しい事を示している。 数値計算結果を用いた観測的可視化を行った所、初期条件としてはASSとなる磁場構造を仮定した場合でも、実際にシンクロトロン放射で観測される領域の磁場構造はBSS様の構造となる事を示した。BSSは銀河を貫くような初期条件磁場構造の場合でないと形成されないと考えられていたが、観測される構造は初期条件にはあまり依存せず、観測限界以下の構造ではASS様の閉じた構造である可能性もある事を示している。また、同じモデルでも見込み角によって、異なる観測的特徴を示し、それらは観測をよく再現できる事がわかった。例えば、face-onの銀河の場合、VLBI等による高分解能の磁場の偏波観測から求められた磁場構造分布(Anraku et al. 2015)を非常に良く再現している事もわかった。また、edege-on銀河の特徴であるX字型の磁場構造も再現され、中心からのアウトフローとの関係を示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
RMやシンクロトロン放射強度の再現など、観測的可視化をさらに進める。本年度は観測周波数が限られていたが、今後はさらに多数の周波数帯の観測を行い、ファラデートモグラフィーの手法を用いて、観測結果から元の磁場構造がどの程度再現できるかを確認する。その結果を踏まえて、今後見込まれるSKAなどの大規模な電波観測へどのような観測提案を作成できるか等を検討する。 冷却効果を考慮した数値計算を行ったが、本計算では2kpcより内側では低温ガス円盤が形成されなかった。これは、1kpc近傍で銀河の回転速度勾配が変化するために生じる角運動量輸送効率の低下に起因して、中心ではあまりガス密度があがらず、結果として冷却効率が悪いためであると考えている。実際の銀河は中心ほど高密度な低温分子ガスが多く存在しているため大きく異なる点である。本計算では、初期条件としてトーラスを仮定し、そのガスを降着する事で銀河ガス円盤を再現しているが、今後は初期条件として中心程密度の高い指数関数分布を使うなど、より現実に則した数値実験を行う。
|
Causes of Carryover |
平成24年度2月半ばから平成25年度9月末まで産前産後休暇及び育児休業のため研究を中断した。そのため、育児休業等による本科研費の延長を申請した。そのため、平成26年度の予算はほぼ当初計画通り支出しているが、研究中断時の予算が残額として計上されている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費:保年度も国際会議や長期の研究会への参加は難しいと見込まれる。天文学会参加や国内研究会参加3件程度と共同研究者との研究打ち合わせに使用する。 物品:解析用デスクトップPC、及びノートPCの更新、数値計算結果を保存するハードディスクの購入を予定している。解析ソフトのライセンス更新料(IDL2本)も予定してる。 その他:論文出版費、印刷費などに使用予定
|
Research Products
(3 results)