2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740167
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
船木 靖郎 独立行政法人理化学研究所, 肥山ストレンジネス核物理研究室, 協力研究員 (00435679)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 原子核理論 / クラスター構造 / α凝縮 / 元素合成 |
Research Abstract |
1. 4α直交条件模型を用いて、4つのα粒子の相対運動をフルに解き16Oの励起状態を議論した。従来の研究から、4つのα粒子がガス的に配位し最低エネルギー状態を占有した4α凝縮状態が6番目0+状態として得られている。この6番目0+状態のファミリーと考えられる1-,2+,3-,4+励起状態の存在を予言した。これらは全てHoyle状態(12Cの第二0+状態)の成分を大きく持ち、Hoyle状態の周りをα粒子が回転運動するバンドを形成する可能性が高いことを示した。この回転バンド状態と4α凝縮状態との構造変化についても議論した。2. 8Be、12Cを非常に良く記述することが知られているα凝縮型の微視的クラスター模型波動関数を、16O+αクラスター模型型に拡張し、20Neのα+16O回転バンド状態について議論した。この拡張型模型が極めて良く、従来のクラスター模型で得られている回転バンド状態を再現することを示した。従来のクラスター模型はクラスター間相対距離をパラメータとするのに対し、拡張型α凝縮模型はクラスターの密度分布をパラメータとする。クラスターガス状態以外の通常クラスター状態についても、クラスターの密度がその構造の本質を与えるパラメータであるという結論を得た。3. 星の中での12C生成反応である熱的3α融合反応について、3体の境界条件を必要としない、虚時間発展法に基づく新たなアプローチで、3体の連続状態を経由するプロセスが重要となる低温(10^7K程度)での反応確率を調べた。最初により簡単な系(16O+α)でこの新たなアプローチが精度よく厳密解を与えることを確認した。3α融合反応では、低温領域で従来知られてきた理論の反応確率を25桁以上上回る研究結果が最近報告されている。我々のアプローチによる計算ではそのような反応率の増大は見られず、従来の理論データにおおよそ一致する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画であった、4α直交条件模型を用いた4α凝縮状態のファミリーを探る研究は、当初の予想を大きく超え、αガス状態の豊富な存在形態を持つことを示した。一方で、複素スケーリング法を適用した、共鳴の境界条件を取り入れた研究は少々遅れ気味であるが、基本的な計算コードは完成しており、次年度より本格計算に入る予定である。また微視的α凝縮模型波動関数の有用性がαガス状態以外のクラスター状態についても示される等、大きな広がりを持ってαガス状態研究が進んでおり、全体として順調かそれ以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在明らかにしている、4α凝縮状態のファミリー状態についての成果を論文にまとめた上で、共鳴の境界条件を取り入れた大規模計算を本格的に進めていく。現在模型空間を制限した予備計算結果を得ているが、次年度中に第一段階目の計算結果を出し、レター論文にまとめる予定である。またαガス状態研究の広がりの一つとして、ストレンジネス量子数を持つΛ粒子をα凝縮状態に加えた際の構造変化についても、議論する予定である。これは微視的αクラスター凝縮模型波動関数を用いて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は141058円である。今年度8月よりHPCI戦略プログラムの支援員として理研に所属が変わった。HPCIプロジェクトにおける、大規模計算を目指した萌芽的研究課題である原子核クラスター構造に関する研究課題と、αクラスターガス状態に関する本研究課題とで互いに関わりが大きいことから、出張旅費等、研究費の一部をHPCIプログラム予算からねん出した。そのため、前述の次年度研究費が生じたという状況である。次年度申請する研究費と合わせ、二度の国際会議での研究成果発表、国内研究会、学会参加等、旅費に9割使用し、残り1割を研究課題遂行のための書籍費にあてる予定である。
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Research Products
(10 results)