2011 Fiscal Year Research-status Report
LHC実験を踏まえたILC実験における暗黒物質探査
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23740169
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 重貴 東京大学, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (00451625)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / ILC / LHC / 新物理模型 |
Research Abstract |
本研究課題における主目的はLHC実験から得られる結果を踏まえた上でのILC加速器実験における新物理及び暗黒物質探査の研究である。初年度の研究成果として以下の4つが挙げられる。どれも論文として査読付きの雑誌に投稿し、すべて掲載に至っている。(1)テラスケール以下に現れる新粒子が暗黒物質のみである場合、LHC加速器実験での標準模型を超えるシグナル探査は非常に困難となる。またこの様な場合、ILC実験でもシグナル探査は難しいものとなる。しかしながら、ILC実験において重心系のエネルギーが十分に大きければ、Wフュージョン過程を用いた暗黒物質生成が有効となり、そのシグナル探査が可能であることを示した。(2)テラスケール以下に現れる新粒子として、暗黒物質(DM)の他に、電荷を持ち弱い相互作用をする粒子(X)が存在するとき、ILC実験におけるX及び反X粒子の対生成とそれに続くX粒子のDMとWボソンへの崩壊過程を用いて、ユニバーサルにX及びDMの性質を調べる事が可能であることを定量的に示した。またこの過程を用いて、テラスケールの新物理模型探査が可能となる。(3)暗黒物質を予言するテラスケールの新物理模型の一つにリトル・ヒッグス模型がある。この模型はトップクォークのパートナーとなる新粒子の存在を必ず予言する。またこのパートナー粒子とヒッグスボソンとの湯川相互作用の強さは一意に決まっている。この湯川相互作用をLHC実験で測定することは困難であるが、ILC実験ではこの相互作用を精度よく測定可能である事を示した。(4)代表的なテラスケールの新物理模型の一つにゲージ伝達機構を用いた超対称模型がある。この模型は非常に軽いグラビティーノの存在を予言する。ILC実験では、グラビティーノの質量を、インパクトパラメータを用いて高精度で測定可能なことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度における研究計画の第一段階は、リトル・ヒッグス模型や超対称模型等の暗黒物質を予言するテラスケールの素粒子模型に注目し、暗黒物質の性質がどの程度の精度で測定可能であるか調べる事である。この課題はILC実験グループと共同で研究を進め、論文を完成させた点において達成したと言える。またこの論文は既に査読付き雑誌に投稿され、掲載の決定が成されている。 また同年度における研究計画の第二段階は、テラスケールの素粒子模型の詳細によらない手法を用いて、ILC実験における暗黒物質探査の可能性を調べる事である。この課題の達成のため、暗黒物質が標準模型におけるゲージ量子数を持たない場合において研究を行った。その際には、ILC実験におけるシグナル計算のみならず、暗黒物質検出実験等における制限、検出可能性も考慮した。 更にILC実験における新物理探査の可能性を探るため、前項成果報告に述べた2つの研究(リトル・ヒッグス模型におけるトップパートナー探査、ゲージ伝達機構を用いた超対称性模型におけるグラビティーノ生成)についても合わせて研究を行い、重要かつ興味深い結果を得た。上記2つの研究計画を達成した論文に加え、これら2つの研究についても論文を作成し、雑誌掲載に至った。 またこれらの研究成果を、国内においては日本物理学会(分科会)において、国外においてはILC関連の最も大きな国際会議の一つであるLCWS11会議において発表した。以上のことから、平成23年度の研究計画は、非常によく達成されたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在LHC実験における重心系のエネルギー7TeVの運用が終了し、その実験結果が次々に報告されている最中である。HC実験の重要な結果としては、標準模型の予言するヒッグス粒子が存在しその質量は約125GeV程度である可能性が高いこと、そして標準模型を超える新物理のスケールは少なくともテラスケールよりも高い可能性が濃厚であることが挙げられる。これら実験結果及び現在8TeVで運用しているLHC実験の現状を踏まえ、以下の3つの計画に基づいて、今後の研究を推進していく予定である。(1)上記のLHCの結果を超対称模型に適用すると、超対称性の破れは10から100TeV程度と高い可能性がある。この場合には、最もありそうな模型としては、純粋な超重力伝達機構を用いた超対称模型(Pure Gravity Mediation)が挙げられる。そのため、ILC実験においてどのような過程に注目しシグナルを発見及び解析すべきかを定量的に議論する。(2)超対称模型以外に100GeV程度の軽いヒッグスを予言するテラスケールの新物理模型としてはリトル・ヒッグス模型が挙げられる。一方、この模型はトップクォークのパートナーとして新粒子を予言する。現在、この新粒子の質量は7TeVにおけるLHC実験の結果により制限されている。このため、この制限を満たした模型パラメータ領域においてILCシグナルを評価する。(3)現在のLHC実験の結果は、標準模型の予言と無矛盾である。一方宇宙観測より、暗黒物質が存在していることは確実である。このため、標準模型に暗黒物質粒子を加えた物理系を考え、この系をテラスケールの新物理模型の詳細によらない方法で解析を行うことは非常に重要である。この解析の第一歩として、ゲージ・シングレットな暗黒物質を仮定してILCシグナルを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度中盤より、LHC実験の8TeVでの運用結果が次々と報告される。本研究課題において、これらの実験結果を踏また上でのILC実験における暗黒物質探査可能性を探る研究は佳境を迎える。そのため以下の3項目を中心に科研費を使用する予定である。(1)新しいLHC実験及び様々な暗黒物質検出実験の結果を踏まえ、新物理模型の模型パラメータをスキャンする必要がますます重要になる。その計算量と計算結果は膨大なものとなるため、数値計算環境をソフト的にもハード的にもアップ・グレードする。(2)研究計画が2年目とのこともあり、他の研究者との議論や、得られた研究成果を国内外に広く発表するために、次年度科研費の一部を国内外における旅費に使用する。特に国内旅費は研究打ち合わせに、海外旅費は研究成果発表に使用したいと考えている。(3)次年度はILC実験グループが高額設計書を作成する予定となっている。この設計書において、ILC実験における暗黒物質探査の可能性は重要な項目の一つとなっている。そのため、実験家との打ち合わせを密にするための招聘費等に科研費を使用する。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Dark matter wants Linear Collider2011
Author(s)
Shigeki Matsumoto, Masaki Asano, Keisuke Fujii, Toru Honda, R. S. Hundi, Hideo Ito, Shinya Kanemura, Takehiro Nabeshima, Nobuchika Okada, Tomoyuki Saito, Taikan Suehara, Hitoshi Yamamoto
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Journal Title
Nuovo Cimento C
Volume: 034
Pages: 93-100
DOI
Peer Reviewed
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