2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740177
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
武田 真滋 金沢大学, 数物科学系, 助教 (60577881)
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Keywords | 格子量子色力学 / 有限温度密度QCD / 相転移 / 有限サイズスケーリング |
Research Abstract |
本年度は、本研究の最終目標である3フレーバー理論の問題に取り組む前に、まず、4フレーバー理論の相構造解析を行った。この理由は、すでに4フレーバー理論のデータが揃っており、有限サイズスケーリング法を用いた解析法の吟味が可能だからである。結果、軽い質量領域では一次相転移の兆候が見え、一方、重い方ではクロスオーバーの振る舞いが見られた。これにより、符号問題が厳しくない状況において、我々の解析法の妥当性を示す事ができた。現在、これらの結果を論文にまとめているところであり、近日発表予定である。また、これらの4フレーバーの結果は、秋の物理学会やセミナー(国内1件)、各種研究会(海外2件、国内1件件)、で発表した。 一方で、本題の3フレーバー理論の現状は、空間格子サイズ8x8x8,10x10x10のデータを生成し、解析の結果、臨界終点存在の兆候が見られた。具体的には、感受率の体積依存性の特徴から数10%の誤差で臨界終点の範囲を定めることができた。今後はさらに精度を高めるために、大きな体積12x12x12のデータを生成したり、ビンダーキュムラント法を用いる予定であるが、これは次年度の課題としたい。本年度中に臨界終点の存在の可能性を示せたことは、次年度に繋がる意義深い結果である。 技術的な進展に関しては、クオークのスピン自由度に関する部分を簡約化することにより、クオーク行列式の計算コストを従来法に比べて1/3に圧縮することに成功した。これにより、上記大体積の計算が可能となった。これは近似を使わず厳密さを保っているため、制御が難しい系統誤差に悩まされることはないため将来性的に有効な方法である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度のデータ生成には、筑波大学計算科学研究センターのHA-PACS計算機(全ノード数268)を用いた。これは、各ノード当たり4GPUを搭載しており、本研究の計算に重要な役割を果たしている。平成24年度後期は学際共同利用に応募し、8ノード換算で22000時間の配分を無料で獲得したことが「おおむね順調に進展している」要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度も、上記HA-PACS計算機の計算時間獲得のため学際共同利用を申請し、すでに8ノード換算で3100時間を獲得した。これは本研究を推進する上で十分な時間であると考えている。仮に、足らない場合は追加申請を行ったり、新たにGPU付き計算機を購入する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の使用は原則的に、研究成果発表のための旅費として考えているが、上記、「今後の研究の推進方策」にあるように、計算時間が不足した場合には、計算機を購入する予定である。
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