2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23740177
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
武田 真滋 金沢大学, 数物科学系, 助教 (60577881)
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Keywords | QCD / 有限温度密度相転移 / 臨界点 / 尖度 / 有限サイズスケーリング |
Research Abstract |
最終年度は、質量と化学ポテンシャルが縮退した3種類のクオークを含む量子色力学の相構造を調べた。このモデルは現実世界とは異なるが、試験的な計算として行った。特に、臨界点の位置特定に重点を置いた。この決定のためには、まず温度と化学ポテンシャルで張られる2次元パラメーター空間内において、相転移線を定めなければならい。そこで、各種物理量に対する感受率のピーク位置、あるいは歪度がゼロとなる点を相転移として定めた。そして、その相転移線上に存在すると期待される臨界点の場所を特定するのであるが、様々な解析法を用いた。一つは、尖度を用いる方法でこれはもっとも理論的に優れたものであるが、別の方法としてギャップ法も行った。前者は、相転移線上で測定した尖度の値が体積によらず一定になる点を臨界点と同定する方法である。尖度は4次のモーメントから計算されるため、統計的揺らぎが大きく高統計が必要であるため精密に臨界点を決めることが難しかった。そこで、後者のギャップ法を用いたのであるが、これは、二つの独立な物理量に対して、その相転移点が一次相転移では一致するのに対して、クロスオーバーであれば転移点がずれるという現象を用いる。この計算には2次のモーメントまでしか現れないので、比較的低統計でも臨界点を決めることが可能である。そこで、これを用いて上記の理論の臨界点を評価した。今回の計算は小さい体積での試験的な段階ではあるが、一連の解析を成し遂げることができ、方法論としての第一歩を記した意義は大きい。今後は、大体積での計算や、さらに精密に臨界点を決定する解析を洗練していくことが期待される。
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