2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740178
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥山 和美 信州大学, 理学部, 准教授 (70447720)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 余剰次元 / ゲージ・ヒッグス統一 / ファジートーラス / 脱構築 / ABJM理論 / M理論 / M2ブレーン / AdS/CFT対応 |
Research Abstract |
本年度は(1)ファジーな余剰次元を用いたゲージ・ヒッグス統一、(2)3次元球面上のABJM理論の分配関数、についての研究を行った。(1)昨年度に行ったF理論における非可換なサイクルに巻き付いたDブレーンの研究に引き続き、台湾精華大学の古内氏、中央大学の稲見氏と共同で、ファジーな余剰次元を現象論に応用する可能性について研究した。4次元のゲージ理論から出発し、ポテンシャルの極小としてファジートーラスが実現される模型を考察した。このトーラス上のウィルソン線を4次元でのスカラー場と同定し、スカラー場のポテンシャルを1ループで求めた。このポテンシャルから決まるスカラー場の質量はKKスケールより軽く取ることができるため、ゲージ階層性の問題を解決できる可能性があることを指摘した。この模型では、余剰次元が一種の脱構築により自発的に出現しており、理論的にも興味深い模型になっている。(2)最近Kapustin-Willett-Yaakovにより、局所化の手法を用いることで、3次元球面上のABJM理論の分配関数が固有値積分の形で求められた。この固有値積分は、積分測度がエルミート行列模型とは異なり通常の手法がそのままでは使えない形をしているため、解析が困難である。私は、コーシー恒等式を用いることにより、ゲージ群のランクNについて足し上げた大分配関数が簡単な表式になることを指摘した。また、N=2の場合に固有値積分を計算し、チャーン・サイモンズ結合定数kの関数として分配関数を厳密に求めた。この結果は、M2ブレーンが複数枚重なった場合の性質や、M理論のAdS4背景時空におけるAdS/CFT対応を調べるための重要な一歩であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ブレーンのダイナミクスを通じて得られる、超弦理論に特有な量子的に拡張された時空の幾何学を研究し、そこで得られた知見を素粒子現象論へ応用することである。現在までのところ、ファジーな余剰次元を用いたゲージ・ヒッグス統一、ABJM理論の厳密な分配関数の計算による複数枚重なったM2ブレーンのダイナミクスの研究という形で、研究目的に向って着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度に行ったABJM理論の分配関数の計算を更に発展させ、すべてのNについて足し合わせた大分配関数を厳密に求めることを目標にしている。このテーマは、名古屋大学多元数理研究科の森山翔文氏、京都大学基礎物理学研究所の初田泰之氏と共同で、現在研究を進めているところである。また、ファジーなサイクルに巻き付いたブレーンの研究や、その現象論への応用についても、引き続き台湾精華大学の古内一之氏らと協力しながら研究を進めていきたい。しかしながら、現在の研究が行き詰まった場合やほかに面白い問題がある場合など、研究計画の目的に反しない範囲で必要に応じて違うテーマの研究に移ることも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も、主として旅費として使用する。7月にドイツで行われる国際会議「Strings2012」へ参加しその旅費に使う予定である。また、9月に京都大学で行われる滞在型研究会や、共同研究者との研究打ち合わせにも旅費として支出することを考えている。また、本年度の海外出張の旅費が当初計画で見込んだよりも安く済んだため、次年度使用額が生じた。
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