2011 Fiscal Year Research-status Report
ντ直接検出によるνμ→ντニュートリノ振動実験のバックグラウンド事象の詳細研究
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23740184
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
福田 努 東邦大学, 理学部, 博士研究員 (10444390)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 原子核乾板 / ニュートリノ振動 / OPERA実験 / ハドロン / 核破砕 / 自動飛跡認識 / GPU |
Research Abstract |
世界初のニュートリノ振動現象の直接観測を目標に長基線ニュートリノ振動実験OPERAを行っている。本研究課題の目的は、OPERA実験におけるτ→ハドロン崩壊のバックグラウンド(BG)推定に使用しているシミュレーションの実験的検証、及び新たに提案した反応起因の核破砕片探索によるBG低減率の導出、である。2011年度はCERNで2,4,10GeV/c ハドロンビームをOPERAと同型の原子核乾板検出器に照射した実験の解析グループを立ち上げ、データ解析を推し進めた。OPERA本実験のτ粒子崩壊探索長の約9倍にあたる3600事象のπ粒子を解析し、300事象のハドロン反応を検出した。今後、反応点から生成した2次粒子の詳細解析を進め、シミュレーションとの比較を行う。一方で新たな試みであるハドロン反応起因の核破砕片探索を行った。核破砕片はハドロン反応のよいプローブとなり、BG推定値を低減できる。核破砕片は0次近似として等方的に放出されるため、大角度飛跡を検出する新たな技術が必要となる。そこで従来の約10倍に渡る大角度(|tanθ|=3.0)まで飛跡認識ができる新型の広視野原子核乾板自動飛跡読み取り装置を開発した。新装置では大量の飛跡認識処理を高速に行うためにGPU(Graphics Processing Unit)を搭載し、超並列画像処理ユニットとして活用した。この研究開発を通して飛跡認識処理を全面的にGPUで行う新しい形の原子核乾板自動飛跡読み取り装置の実用化に初めて成功し、効率的にシステマティックな大角度飛跡解析が可能となった。解析の結果、2,4,10GeV/cでの核破砕片付随率が16,45,65%となる入射エネルギー依存性や、前方放出の方が後方放出よりも生成率が高くなる異方性が見えてきており、大変興味深いデータが得られている。これらはさらに精査して2012年度に最終結果をまとめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハドロン反応の生成粒子詳細解析は順調に進んでおり、予定通りのスケジュールで物理結果が得られると考える。また、新型の広視野原子核乾板自動飛跡読み取り装置の開発に成功したことで、大角度核破砕片探索の研究に関しても技術的な課題はクリアされた。引き続き解析を進めることで2012年度中に最終結果をまとめることが可能である。実験グループ内での協力体制については、OPERA実験内部でもこの解析の重要性が認識され、シミュレーショングループの協力が得られている。現在緊密に連携をとり、同グループが我々の実験のセットアップなどの細かい点をシミュレーション上で再現できるように情報交換を行っている。また、欧州の解析グループもこの研究に興味を示し、同様の解析を独立に行う体制が整いつつある。将来的に、我々がまとめる結果と比較することで解析によるバイアス等がないかクロスチェックを行うことができるだろう。2011年度は7件の本研究課題に関連した学会・研究会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 2011年度の研究開発により解析体制は整ったため、予定通り引き続きハドロン反応から生成した2次粒子の運動量測定など詳細解析を進めていく。また、シミュレーショングループとの連携を密にして、得られた結果との比較を行い、最終結果としてまとめる。(2) 核破砕片解析に関してはハドロン-鉛反応による核破砕片放出とニュートリノ-鉛反応による核破砕片放出に違いがあるかといった興味深いデータが出せる可能性があるため、こういった解析も視野に入れて検討していく。また、学会・研究会等で成果を発表し、多方面からのフィードバックを得て、得られた結果についての理解を深める。(3) この研究のために開発した新型原子核乾板自動飛跡読み取り装置は飛跡認識処理にプログラマブルなGPUを活用しており、従来のハードウェアベースの飛跡認識処理と比べて飛跡認識アルゴリズムを容易に変更できる。原子核乾板の自動飛跡認識アルゴリズムの改良はここ30年間手がつけられていないため、その改良に取り組むことで進行中のOPERA実験、及び将来の様々な原子核乾板実験への波及効果が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・解析遂行のために必要となるデータストレージ用のハードディスクなどを購入するための経費。・シミュレーショングループやクロスチェックグループとの連携を密にするための会議にかかる旅費。・本研究課題に関係する成果発表や研究会参加のための旅費。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] 最新の原子核乾板解析技術
Author(s)
福田努*, 松尾友和, 石田拓運, 渋谷寛, 小川了, 他OPERA実験日本グループ
Organizer
特定領域「フレーバー物理の新展開」研究会
Place of Presentation
三重県三重郡菰野町 鹿の湯
Year and Date
平成23年7月1日
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