2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740186
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平松 尚志 京都大学, 基礎物理学研究所, 特定研究員 (50456175)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙論 / 密度揺らぎ / インフレーション / ダークエネルギー / 数値宇宙論 |
Research Abstract |
流体近似に基づいて LCDM モデルで揺らぎの非線形進化を追うためのコード(以下、流体コード)のプロトタイプが完成した。最初は差分法を用いたコードを作成したが、想定していた精度に到達できなかったため、コードを一から作り直し、発展を記述する中核部分を擬スペクトル法に変更した。さらに、流体コードの初期条件として用いるインフレーション起源の揺らぎを計算するため、ダークマター、光子、バリオンの各揺らぎの時間発展を記述するボルツマン方程式を解くコード(以下、ボルツマンコード)を作成した。ただし、現状ではボルツマン方程式には揺らぎの1次のオーダーまでしか考慮していない。また数値宇宙論では揺らぎを幅広い視点から捕え、インフレーション以外の揺らぎの起源も取り扱う必要があると考えている。そこで、申請者自身が以前開発した汎用偏微分方程式解法コードを改良し、揺らぎの起源となりうるドメインウォールや宇宙ひもといった、初期宇宙に存在した場の位相欠陥の生成をシミュレートするコードを作成した。流体コードに関する中間的な成果発表を熊本や京都(内部向け)で行い、さらに修正重力理論に関する研究発表をポルトガルと青森で行った。初年度はほとんどの時間をコードの作成に使用したため、対外的な発表は限定的になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初に予定していた、LCDMモデルを対象としたコードは完成した。これを修正重力理論に適用するためにはコード内のポアソン方程式の部分を改良する必要があるが、コード全体からすると修正を必要とする部分はごく一部に限られるため、コードの中核部分はほぼ完成していると言える。さらに初期条件を与えるコードも実用可能な状態になっているため、当初の目標は達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
初期条件を与える線形ボルツマン方程式ソルバーに関しては、二次摂動までを取り入れたものに拡張する。これには大きな二つのメリットがある。一つは非ガウス性が混在した場合の初期条件を構築できることで、流体コードの適用対象をさらに広げることが可能になる。もう一つは、揺らぎの進化を記述するボルツマン方程式に二次摂動を取り入れること自体が、世界でもまだ成されていない大きな課題であり、かつ Planck 衛星による観測と合わせて非常に重要視されているからである。流体コードに関しては、テスト計算を通して結果に大きな数値誤差が混入することが明かになった。それの由来を特定し、除去可能であるものは除去するようさらに進んだ調査が必要である。また、現時点では計算時間がかなり掛かるため、修正重力理論への適用も考慮しながら、実用化に向けて並列化効率をさらに上げる必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度に購入予定だった計算サーバ、およびデータストレージは次年度に購入する。これは、購入を検討していた CPU の発表が想定より遅れたために23年度内の購入が困難になったことと、初期条件を作成するボルツマンコードの構築に時間が掛かったため、流体コードの本格的な計算が次年度にずれ込んだことが理由に挙げられる。なお、データストレージに関しては、スペクトル解析用として24年度に購入を予定していたコンピュータと融合し、ファイルサーバとして構築する。
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Research Products
(3 results)