2011 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノ力学を礎とする新しい物理の探究とその検証
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23740187
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉岡 興一 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (80363323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 素粒子論 / ニュートリノ |
Research Abstract |
1.対称性の破れに焦点をあて、次年度以降における模型研究の基盤とすべく、超対称性の破れについて研究を行った。ゲージ伝達による機構は、さまざまな現象論的利点をもつが、F 項による破れはかなり一般の場合にゲージーノに質量を与えることができないことが知られている。我々は超対称性のもう一つの破れである D 項を用いる手法を提案した。F 項のみのポテンシャルの停留点において超対称性が破れる場合と破れない場合の2つに分け、D 項の影響を考察した:前者の破れる場合は、D 項の存在により理論の真空が場空間の無限遠点となり、まともな理論とはならない事を明らかにした。また後者の破れない場合には、複素化したゲージ変換を考えることにより、所謂 Fayet-Illiopoulos 項がない限り、超対称性が回復してしまう。また、D項の存在に伴い荷電場の F項が必ず現れるため、破れの伝達機構も特徴あるものとなる。伝達場とその相互作用の構成や輻射補正の評価を遂行し、ゲージーノ質量が非零で現れることを示した。2.ニュートリノと宇宙の暗黒物質の関わりついて考察した。とくに右手型ニュートリノに質量を与えるスカラー場が暗黒物質である可能性に着目した。その大きな期待値と小さな質量は、加速器実験における観測可能性や、宇宙線中の反粒子成分の観測結果の両者に対して重要となるが、そのようなポテンシャルは超対称性をもつ理論では容易に実現できる。量子補正を通じてスカラー場は多様な崩壊モードを持つが、ニュートリノ質量がディラック型およびマヨラナ型の場合に分け、電子・陽電子・光子・電弱ボソン・ヒッグス粒子の生成率を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニュートリノ力学にともなう新しい物理描像を多角的に考察する試みとして、超対称性を含む対称性の破れや、スカラー暗黒物質のさまざまな性質について研究を進めた。基礎理論におけるニュートリノの本質的役割の理解へ向け、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、対称性によるニュートリノ力学の理解を追究する。一例として、大統一理論を念頭に置き、クォークの湯川階層性問題との関わりを考察することが挙げられる。また右手型ニュートリノの世代構造解析に関して、系統的な取扱い法の研究を進める。また、対称性の名残りと暗黒物質の安定化にも注目する。その実現は、超弦理論などの高次元物理より得られると期待され、自然現象との接点を手がかりとして高いスケールの基本原理を探る。さらに、前年度までに得られた崩壊振幅の解析を発展させ、ニュートリノのタイプや質量依存性、残存量などの数値評価を通じて、その検証をおこなってゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品 (専用計算機) の費用として、今年度は少額のみ使用した。次年度以降に、より高度な同機器の必要性が想定されるため、その費用として用いる予定である。また、研究目標の達成の為には幅広い視点で現象論的課題を遂行してゆく必要があり、専門図書の購入、分野外研究者の招聘、さまざまなテーマの研究会への参加等をおこなう。
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Research Products
(4 results)