2012 Fiscal Year Research-status Report
真空構造の解析によるレプトンフレーバーと超対称性の破れの起源の解明
Project/Area Number |
23740190
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
下村 崇 新潟大学, 理学部, 特任助教 (00447278)
|
Keywords | 素粒子論 |
Research Abstract |
超対称模型における真空の構造を解析し、真の真空と誤った真空がどこにあるかを明らかにする事で誤った真空を避けるための条件を導く。この条件から超対称模型のパラメーターに制限を付ける事を目指している。今年度は大型ハドロン衝突型加速器(LHC)実験によってヒッグス粒子と見なせうる粒子が発見され、その質量と相互作用の様子に関する情報がもたらされた。この情報をもとに、超対称性の破れの伝達機構として蜃気楼伝達機構を採用した次最小超対称標準模型を解析し、この模型におけるヒッグスの質量と相互作用の強さを調べた。この際にこれまでの真空構造に関する研究成果を応用し、真空の安定性からヒッグスに関するパラメーターの許容領域を明らかにした。これにより調べた模型が真空の安定性とパラメーターのファインチューニングの観点から良い模型である事を示した。またヒッグス粒子だけでなくニュートリノの質量も考慮した模型の構築も行なった。この模型では超重力の効果によってニュートリノが自然と小さな質量を持つ事、ニュートリノ間の混合を正しく出せる事、またニュートリノ質量の生成に起因する陽子崩壊が実験と矛盾無い事を示した。この模型ではニュートリノの湯川結合が大きいため、誤った真空が正しい真空の側に現れる可能性が高いと感がラレル。今後はこの模型に対しても真空構造を解析し、パラメーターをどの程度制限し得るかを調べていく。また広く考えられている最小超対称標準模型のフレーバー構造を考慮した解析を行ない、リチウム問題を解決し得るパラメーター領域を明らかにした。今後、このシナリオに対しても真空構造の解析を行ないパラメーターを制限していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は真空構造の解析によって超対称模型のパラメーターに理論的な制限を課す事である。今年度は今までの研究成果を特定の模型に応用し、実際にパラメーターが制限しうる事を示した。特に去年は大型ハドロン衝突型加速器(LHC)実験によってヒッグス粒子に関する情報がもたらされたため、蜃気楼伝搬機構を課した次長対称標準模型におけるヒッグスの質量と相互作用に対して解析をおこない、関係するパラメーターの許容領域をLHC実験と真空構造の観点から明らかにした。これにより、レプトンフレーバーの破れだけでなく電弱対称性の破れの物理に対しても真空構造の解析による制限が有効である事を示した。これにより、他の模型に対しても同様の解析を行なえば理論的な制限が得られる事がわかった。またレプトンフレーバーの破れに関しては、超対称標準模型にレプトンフレーバーの破れを導入したシナリオを考え、宇宙観測におけるリチウム問題を解決しうるパラメーター領域を明らかにした。この情報と真空構造の解析からさらにパラメーターを制限する事ができると期待でき、来年度に詳細な解析を子なう予定である。この様に模型の真空構造を解析するための準備を進めたが、さらに強い条件を導くため真空間の遷移確率の計算を行なうための準備も進めている。遷移確率の計算にはいくつか手法があり、それらの間の違いとどの方法がもっとも適切ななのかを現在調査中である。これにより、来年度は遷移寿命に関する解析も取り入れた結果を得る事ができると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、先ず第一により詳細にパラメーターを制限するため真空間の遷移寿命の計算を本格的に行なっていく。その結果を依然解析した蜃気楼伝搬機構を課した次最小超対称標準模型に適用し、どの程度パラメーターが制限できるかを明らかにする。特にヒッグス粒子の質量や相互作用の強さに注目し、現在大型ハドロン衝突型加速器(LHC)実験から得られているデータと比較検討する事で、模型のパラメーターを許容領域を示す。また、同様の解析を超重力とU(1)R対称性を課した模型に適用し、ヒッグス粒子の関係するパラメーターの許される領域を明らかにしていく。ヒッグス粒子に関して多方面から国際的に研究が進展していくと考えられるので、それらの研究結果も自分の研究に反映させつつ随時制限を新しくしていく。またレンプトンフレーバーに関係するパラメーターの制限を導くために、いくつかの模型に対して解析を行なっていく。特に超対称標準模型にレプトンフレーバーを取り入れた模型でリチウム問題と暗黒物質を説明しうるパラメーター領域は注目を集めており、この領域が真空構造と遷移寿命からどの程度制限できるかを明らかにする。また同様の解析を超重力とU(1)Rの破れを取り入れた模型に適用し、ニュートリノとヒッグスに関するパラメーターがどの程度制限できるかを明らかにする。また最近、ヒッグスの情報が分かってきた事から電弱バリオン数生成がある程度検証できる様になってきていると考えており、この方面に対して真空構造と遷移寿命の観点からどこまでものが言えるかを調べていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後もLHC実験から新たな結果が報告されると考えられるので、国内外の会議や研究会に参加するための旅費に充てたいと考えています。またセミナーに専門家を呼ぶための旅費と謝金にも当てたいと考えています。さらに来年度は中規模の数値計算を行なう予定であり、このための計算機やそのメモリ、データ保存用のハードディスクを購入したいと考えています。
|
Research Products
(6 results)