2011 Fiscal Year Research-status Report
精密宇宙観測および素粒子論に基づく初期宇宙進化の探求
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23740195
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高橋 智 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432960)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 初期宇宙 / 非ガウス性 / 21cm線 / 等曲率揺らぎ |
Research Abstract |
昨年度は、初期揺らぎの非ガウス性、及びそのスケール依存性、等曲率揺らぎ、原始重力波などを用いた初期宇宙のシナリオの検証について多角的に検討した。 初期宇宙のシナリオを検証していく上で、初期密度揺らぎを調べることは大変重要である。初期密度揺らぎの生成メカニズムとしては、インフレーションを起こすインフラトン場の量子揺らぎが候補として知られているが、その場合、生成される密度揺らぎの性質はほぼガウス的になる。近年の観測で、密度揺らぎのガウス性は精度良く観測されるようになってきているが、例えば、WMAP衛星からの非ガウス性に対する制限の中心値は多少ガウス的なものから外れており(ただしガウス的な揺らぎも現在のところ観測とは矛盾しない)、もし、揺らぎがある程度非ガウス的なものであれば、他の揺らぎの生成メカニズムを考える必要がある。そのような非ガウス性が大きくなり得る模型として、curvaton模型、modulated reheating模型などが知られているが、これらの模型をさらに峻別しようとすると、非ガウス性を特徴づける密度揺らぎの3点関数の大きさのみでは不十分で、大きさ以外の情報が必要になってくる。我々は、3点関数の大きさのスケール依存性について、特にcurvaton模型に着目して詳細に調べた。その結果、Planck衛星でも観測可能なスケール依存性を持つ場合があることを明らかにした。 さらに、等曲率揺らぎについての研究も行った。等曲率揺らぎは、バリオン数生成模型や暗黒物質の正体に関連して、これまで様々な議論がなされているが、実は宇宙背景放射の揺らぎの観測では、これら2つの等曲率揺らぎのモードは観測的に区別できない。しかしながら、我々は21cm線の観測を用いると、それらは区別できることを議論し、さらに将来の観測で、どの程度峻別できるかについて詳細に調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、来年に結果が公表される予定のPlanck衛星において、初期宇宙のシナリオがどの程度検証可能か、に特に着目し研究を行った。例えば、初期揺らぎの非ガウス性のスケール依存性を用いて、特にカーバトン模型におけるカーバトンポテンシャルのPlanck衛星での検証可能性について詳細に調べた。またその他、原始重力波について、将来の宇宙背景放射の揺らぎの観測と重力波の直接検出の観測を合わせると、どの程度インフレーション模型が検証できるかについても研究を行った。さらに、21cm線を用いた初期宇宙のシナリオの検証可能性についても研究を行い、その研究では主に等曲率揺らぎについて詳細に調べた。これらの研究成果はすでに論文として発表し、雑誌にも掲載されている。よって、研究については、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年には宇宙背景放射の揺らぎをWMAP衛星よりもさらに精密に観測できるPlanck衛星からの結果も公表される予定であるため、その結果が公表された際、初期宇宙の模型について、どの程度検証できるかについて、さらに引き続き検討していく予定である。また、実際にPlanck衛星からデータが公表された後は、それらの実際のデータを用いて、様々な模型について、近年の宇宙論研究では標準となっているMCMC (Markov chain Monte Carlo)法を用いて検証していく予定である。 また、宇宙背景放射の揺らぎのみならず、21cm線を用いた宇宙初期のシナリオの検証についても研究を行っていく予定である。特に、初期揺らぎの非ガウス性について、3点関数、4点関数などや、それらのスケール依存性など、21cm線を用いた場合にどの程度有用な情報が得られるか検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外の研究者との共同研究を予定しており、研究打ち合わせのために海外旅費が必要となる。また、国際会議出席のための海外旅費も必要となる。また、国内の他の研究機関の研究者との共同研究も予定しており、そのための国内旅費も経費として必要となる。よって、次年度は研究費の中では旅費が主となるが、その他パソコンなどの物品も購入する予定である。
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