2013 Fiscal Year Research-status Report
精密宇宙観測および素粒子論に基づく初期宇宙進化の探求
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23740195
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高橋 智 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432960)
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Keywords | 初期密度揺らぎ / インフレーション |
Research Abstract |
昨年3月に宇宙背景放射の温度揺らぎに関するPlanck衛星からの結果が公表されたため、特に、その結果を受けて、初期宇宙の現象、特に初期密度揺らぎの生成メカニズムに関して、どのような意味をもたらすかについて研究を行った。 初期揺らぎの起源として、主に考えられてきたのはインフレーションを起こすインフラトン場の量子揺らぎである。しかしながら、宇宙初期にインフラトン場以外のスカラー場が存在した場合、そのようなスカラー場も量子揺らぎをもち得る。そのようなインフラトン場以外のスカラー場が揺らぎの起源を担うようなモデルとして、curvaton mechanism やmodulated reheating などがある。これらの模型で生成される初期揺らぎの性質は、インフラトン場から生成される初期揺らぎと異なるため、宇宙背景放射の揺らぎなどの観測から得られる初期揺らぎの制限を用いることにより、これらの模型を峻別できる可能性がある。我々は、Planck衛星から得られた初期揺らぎのスケール依存性、非ガウス性、重力波の振幅などに対する制限を用いて、上記のcurvaon model や modulated reheating model などの所謂 spectator field model において、どのようなパラメタ領域が許されるか、議論した。特に、Planck衛星による非ガウス性の制限は以前に得られていたWMAPからの制限よりも厳しくなったが、我々は一般的なspectator field modelのパラメタ領域がどのように制限されるか議論し、どのような模型が好まれるか調べた。 その他、Planck衛星の結果が密度ゆらぎにおけるループ効果に対して、どのような制限を与え得るかについても研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はPlanck衛星の結果を用いて、特に、spectator field のモデルについて、様々な観点から研究を行った。 Planck衛星の結果は初期密度揺らぎの生成メカニズムについて大きな情報をもたらすため、そのような観点からの研究は重要である。その意味で、昨年度の研究成果を鑑みると、研究はおおむね順調に進行していると言えると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年の3月にBICEP2から宇宙背景放射のBモード偏極の結果が公表された。その結果によると、インフレーションのエネルギースケールは比較的高いことが示唆されている。このことは、初期密度揺らぎの起源に対して大きな情報になる。今後は、この結果を加味し、また、今年度中にPlanck衛星から宇宙背景放射の偏極の結果が公表される予定であるので、その結果を受けて、さらに初期密度揺らぎの起源の研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に参加する国際会議が予定されており、その旅費を確保するため。 国際会議参加のための旅費に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)