2012 Fiscal Year Research-status Report
相対論的回転星の静的な不安定性とその非線形動力学的性質の探求
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23740201
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
西條 統之 立教大学, 理学部, 助教 (40510988)
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Keywords | 相対論的回転星 / 流体動力学 / 重力波 / 航空工学的な近似 / 重力波放射による輻射反作用力 / rモード不安定性 / 非線形動力学 |
Research Abstract |
本年度は「r モード不安定性の非線形動力学的性質の解明」に向けて,rモード不安定性の計算手法の検証,rモード不安定性の非線形動力学的性質の探求,rモード不安定性における重力波放射による輻射反作用力の取り入れ方の検証を実施した. 回転星の静的な不安定性の1つである重力波放出に伴うrモード不安定性を研究すべく,ニュートン重力場中の流体動力学に重力波放射による輻射反作用力の最低次である2.5PNの質量四重極モーメントを取り入れた形式の3次元流体動力学の数値解析コードを新たに開発した.航空工学的な近似を各時間ステップで拘束条件として課すために,運動方程式の時間進化の数値スキームを新たに開発し,また境界条件付きの圧力ポアッソン方程式を数値的に高速に解く手法も新たに開発した.研究成果として,当該分野での従来の研究と比較して10--100倍以上の時間スケールの時間進化が可能なこと,不安定性の持続する時間スケールが少なくとも100倍以上であり,動力学的な時間スケール以上に持続すること,不安定性の重力波に対する飽和振幅は弱非線形理論のモデルの結果を支持すること,を明らかにした. 次にrモード不安定性により本質的に効く重力波放射による輻射反作用力の3.5PNの流速四重極モーメントを取り入れたモデルで数値的に研究し,2.5PNの質量四重極モーメントの結果と定性的にほぼ一致する示唆を得た.これは回転星のrモード不安定性の最終状態には,系の不安定性によって励起されるモード間相互作用の非線形性が本質的に重要であることを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は「r モード不安定性の非線形動力学的性質の解明」の飽和振幅の特定,時間進化後の終状態の描像の解明,特徴的な重力波の性質の解明を研究実施計画に挙げた.申請当初の計画では重力波放射による輻射反作用力は質量四重極モーメントによるもののみを考慮する予定であった.ところが,rモード不安定性に最低次で効く輻射反作用力は流束四重極モーメントによるものであることに質量四重極モーメントのものを取り入れた計算の終了後に気づいたため,急遽流束四重極モーメントを取り入れた輻射反作用力を含む数値計算コードの開発,検証を行う必要性に迫られた.本年度はニュートン重力場中における輻射反作用力として,質量四重極モーメントのもの,流束四重極モーメントによるもの両方の開発,検証,飽和振幅の特定,時間進化後の終状態の描像の示唆,特徴的な重力波の波形の抽出に成功した. 不安定rモードの非線形動力学的性質の解明に関して,具体的な数値コードを開発したのはニュートン重力の場合のみである.不安定rモードの特徴的な振動数を開発した3次元流体動力学の数値計算コードを用いて時間進化を追うことにより,その再現に成功し,不安定性の成長する時間スケールもほぼ再現することに成功した.このため,ニュートン重力場中では平成25年度の実施計画である「粘性を含む系におけるrモード不安定性の非線形動力学的性質の解明」を本年度に開発した数値計算コードを用いて研究に着手可能である.しかしながら,相対論的重力の場合の「rモード不安定性の非線形動力学的性質の解明」の研究を開始するためには,その数値計算コードの開発および検証が必要である.相対論的重力場中の計算コードはニュートン重力場中の計算コードと計算スキームは本質的には同じであるため,拡張は容易であると予想されるが,このコード開発,検証,時間進化の研究が研究計画よりも遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は「r モード不安定性の非線形動力学的性質の解明」に関してはニュートン重力場中でのみ不安定rモードの特徴的な振動数,時間スケールの抽出,終状態の示唆,特徴的な重力波の波形の抽出に成功した.まずはこれらの成果を明瞭に示す最終的な数値計算を行い,学術論文を執筆する. 次に相対論的重力の元で航空工学的な近似かつ重力波放射による流束四重極モーメントの輻射反作用力を取り入れた相対論的流体動力学の数値計算コードの開発,検証を行い,相対論的重力場中での不安定rモードの特徴的な振動数,時間スケールの抽出,終状態の示唆,特徴的な重力波の波形の抽出の研究を行い,成果をまとめた学術論文を執筆する. 最後に上記の相対論的流体動力学の数値計算コードに粘性を取り入れて開発,検証を行い,不安定rモードの特徴的な振動数,時間スケールの抽出,終状態の示唆,特徴的な重力波の波形の抽出の研究を行い,成果をまとめた学術論文を執筆する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究1年目の繰越金が少し多かったため,研究2年目の繰越金が発生した.研究2年目の研究費の執行状況は,ノートパソコンの不具合発生のために計画を前倒しして買い換えたことを除くと,ほぼ計画通りであったと考える. 平成25年4月に所属機関を早稲田大学に変更し,研究環境を新たに構築する必要性に迫られている.特に計算ノードを居室に置くことを余儀なくされているため,30-45万円程度の静音ラックの購入が必要不可欠で今年度早急に購入の予定である.残額の20-35万円程度を以前の交付申請書に記載した,書籍等を購入する物品費,国内外の学会,研究会,共同研究に参加するための旅費,セミナー等による専門知識の提供に対する謝金,研究遂行上必要な消耗品のためのその他,に使用予定である.
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Research Products
(8 results)