2013 Fiscal Year Research-status Report
相対論的回転星の静的な不安定性とその非線形動力学的性質の探求
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23740201
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
西條 統之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (40510988)
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Keywords | 回転星 / 流体動力学 / 重力波 / 回転系 / 航空工学的な近似 / 重力波放射による輻射反作用力 / rモード不安定性 / 非線形動力学 |
Research Abstract |
本年度は「r モード不安定性の非線形動力学的性質の解明」に向けて,特に回転系における流体動力学的な手法と航空工学的な手法の研究とその成果の比較を実施した. 本研究では重力放射によって引き起こされ,かつコリオリ力を復元力とする回転星のrモード不安定性に焦点を当てた.その非軸対称不安定性の非線形動力学的性質を探求するために,また星の回転周期のスケールが運動方程式の時間進化の変化に陽に現れないために,重力波放射による輻射反作用力を取り入れた空間3次元の回転座標系における流体動力学の数値シミュレーションコードの開発をはじめて行った.その結果,輻射反作用力に動力学が実行可能な程度の増幅ファクターを加えた場合には低速回転,高速回転する星両方ともその不安定性の飽和振幅はo(1)程度まで増幅可能である結果を得た.またこの不安定性は動力学的手法ではその不安定性を持続せず,動力学的時間内に破壊し,星の最終状態は差動回転する示唆を得た.これは当該分野における慣性系で行われた数値シミュレーションの研究結果を支持するものであり,同時に新たに独自に開発した数値計算コードの検証に成功した意味合いをも持つ. 次に星の回転周期の時間スケールに加えて音波の時間スケールを殺す航空工学的な近似を非線形項を含めて構築し,はじめて提唱した.原理的にはこれまでの動力学的手法よりも10-100倍程度長い時間進化のスケールの描像が本手法により解明可能である.この近似手法を具体的に検証するため,航空工学的な近似を施した重力波放射による輻射反作用力を取り入れた空間3次元の流体動力学の数値シミュレーションを回転座標系で行う計算コードの開発を行った.回転星の平衡解に最も支配的な不安定rモードの摂動を加えて系の時間進化を数値的に解析し,不安定性が発生する線形領域では固有振動数,不安定性の成長時間両者ともにその再現に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は「粘性を含む系におけるrモード不安定性の非線形動力学的性質の解明」を当初の研究実施計画に挙げた.しかしながら,平成25年度は所属機関が早稲田大学に異動になり,平成23年度に購入した計算ノードをはじめ,所有していた計算機群等の研究設備の移動,ネットワークの整備やサーバの設置等新規研究環境の構築,電源系統の不備や確認,無停電電源装置の設置等研究環境に対する適応等に想定以上に手間取ったため,研究計画全体に遅れが生じた. 不安定rモードの非線形動力学的性質の解明に関して,具体的な数値コードを開発したのは流体動力学的手法,航空工学的手法のニュートン重力の場合のみである.このため,ニュートン重力場中では最終年度の実施計画である「粘性を含む系におけるrモード不安定性の非線形動力学的性質の解明」を本年度に開発した数値計算コードを用いて研究に着手可能である.しかしながら,相対論的重力の場合の「rモード不安定性の非線形動力学的性質の解明」の研究を開始するためには,その数値計算コードの開発および検証が必要である.相対論的重力場中の計算コードはニュートン重力場中の計算コードと計算スキームは本質的には同じであるため,拡張は容易であると予想されるが,このコード開発,検証,時間進化の研究が研究計画よりも遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は「r モード不安定性の非線形動力学的性質の解明」に関してはニュートン重力場中でのみ回転系における流体動力学的な手法と航空工学的な近似手法両方で,線形領域では不安定rモードの特徴的な振動数とその成長時間が一致した.まずは航空工学的な近似手法で非線形領域まで拡張した数値計算を行い,学術論文を執筆する. 次に相対論的重力の元で航空工学的な近似かつ重力波放射による流束四重極モーメントの輻射反作用力を取り入れた相対論的流体動力学の数値計算コードの開発,検証を行い,相対論的重力場中での不安定rモードの特徴的な振動数,時間スケールの抽出,終状態の示唆,特徴的な重力波の波形の抽出の研究を行い,成果をまとめた学術論文を執筆する. 最後に上記の相対論的流体動力学の数値計算コードに粘性を取り入れて開発,検証を行い,不安定rモードの特徴的な振動数,時間スケールの抽出,終状態の示唆,特徴的な重力波の波形の抽出の研究を行い,成果をまとめた学術論文を執筆する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は所属機関が早稲田大学に異動になり,平成23年度に購入した計算ノードをはじめ,所有していた計算機群等の研究設備の移動,ネットワークの整備やサーバの設置等新規研究環境の構築,電源系統の不備や確認,無停電電源装置の設置等の適応等のため,研究計画に遅れが生じた.また,平成24年度の研究計画「rモード不安定性の非線形動力学的性質の探求」で,研究遂行中に研究計画の段階で抜け落ちていた流束四重極モーメントによる輻射反作用力がが重要であると認識したため,その数値シミュレーションコードを新たに開発した.以上により研究計画全体に遅れが生じ,未使用額も発生した. 研究活動を効率よく遂行するために,残額は主として論文等を収納するキャビネット等を購入する物品費,国際研究会に参加,発表するための旅費,に使用予定である.
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Research Products
(3 results)