2011 Fiscal Year Research-status Report
極短バンチ生成RF電子銃開発と大強度テラヘルツ光発生の実証試験
Project/Area Number |
23740203
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
坂上 和之 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (80546333)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 極短バンチ / 電子銃 / テラヘルツ / 高周波加速 / フォトカソード |
Research Abstract |
本年度は極短バンチ電子ビーム生成用の電子銃空胴の設計の最適化及び製作を行った。設計としては、これまでのフォトカソードRF電子銃に特殊な1Cellを追加した形状であり、ECC(Energy Chirp Cell)と呼んでおり、このCellにおいてバンチ内のエネルギーをチャープすることができる。その後、自由空間を進行させるもしくは磁場によって行路差を生成することによってバンチが圧縮される。テラヘルツ光をコヒーレントに生成するために200fsecのバンチ長を目標に設計を進めたが、SUPERFISHによる空胴構造設計・PARMELA/GPTによる加速計算の繰り返しによって最適化することによって90fsecを切る極短バンチを4.5MeVのエネルギーにおいて得られる可能性が計算によって示すことができた。バンチ当たりの電荷量も100pCと十分であり、大強度テラヘルツ光生成の要求を満足する性能であるとともに予想よりも2倍程度圧縮できていることで2倍周波数の高いテラヘルツ光までカバーするテラヘルツ光源となりうる。このようなエネルギー領域における極短バンチビーム生成に関してはあまり前例もなかったため、PARMELAとGPTという2種類の計算コードを用いてクロスチェックを行ったがどちらの結果も10%以下の誤差で一致し、到達バンチ長も86~89fsecと一致していた。したがって非常に信頼できる結果であると考えている。このように最適化した電子銃空胴をKEKの協力研究者とともに製作を行い、現時点までに製作が完了している状況である。製作段階の計測ではほぼ設計通りの性能の電子銃空胴が得られているが、今後より詳細な計測を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究課題の進行状況としては予定通り推移しているが、本年度内に行った設計の最適化によって予想を上回る90fsec以下の極短バンチの生成の可能性が拓け、これまでよりもさらに高周波数のテラヘルツ光を生成できる可能性が高まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度設計・製作した極短バンチ生成用高周波電子銃の詳細な評価及びビーム生成試験を行う。現在までに製作の完了している高周波電子銃空胴の詳細な評価及び設計シミュレーションとの比較を行うことによって設計通りの仕様が得られているかを確認する。その後早稲田大学加速器システムに組み込み、コヒーレントテラヘルツ光の生成を行うとともにこれを用いたバンチ長計測を行う。100fsecを切るような極短バンチのバンチ長計測は非常に難易度が高いと考えられ、まずはマイケルソン干渉計によるテラヘルツ光スペクトル計測結果からの逆フーリエ変換によるバンチ長計測を試みるが、クロスチェックとして偏向空胴を用いた計測も準備を行う予定である。コヒーレントテラヘルツ光検出にはボロメータ及びゴーレイセルを用いる予定である。その後テラヘルツ光の強度(平均・ピーク)及びスペクトルの評価を行い、テラヘルツ光源としての有用性に関して議論する。最終的には得られたテラヘルツ光から可能であると考えられる応用に関して議論を行い、将来の利用に向けた取りまとめを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品・消耗品費としては、テラヘルツ光のスペクトルを検出するためのマイケルソン干渉計を構築するために光学部品を購入する。また、本研究課題最終年度ということもあり、国内外の学会・研究会に参加し、本研究課題の成果を広く周知するとともに将来の利用研究に向けた議論を行うため学会参加旅費として使用する計画である。
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