2012 Fiscal Year Research-status Report
ニュートリノ質量とレプトン混合を記述する新物理模型の現象論
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23740210
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
杉山 弘晃 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 研究員 (50548724)
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Keywords | ニュートリノ / ニュートリノ質量 / レプトンフレーバー / ヒッグス粒子 / 素粒子論 |
Research Abstract |
ニュートリノ質量がヒッグス3重項の真空期待値によって生成されている場合に、その真空期待値を小さく抑える機構を提案した。その場合にLHC実験において期待されるシグナルについても議論を行なった。また、ニュートリノ質量を生成する新物理模型のなかには、同符号荷電レプトン対へ崩壊する2重荷電ヒッグスを含むものがある。そのような崩壊シグナルが発見された場合、その2重荷電ヒッグスの起源は3重項と1重項の2種類の可能性がある。崩壊で生成される荷電レプトンのうちでタウ粒子を活用することで、3重項と1重項を区別しうることを示した。 ニュートリノ質量の小ささの理由として、量子補正によって質量が生成されていると考える新物理模型が様々存在する。我々は、1ループで生成される相互作用を2回使うことでニュートリノ質量が生成される新たな模型を構築した。この模型では、ニュートリノ質量の起源・暗黒物質質量の起源・暗黒物質安定性が全て、ひとつのU(1)対称性の破れ方で理解される。他方、暗黒物質の候補のひとつであるニュートラリーノについて現在の制限を精査することにより、単純化した超対称標準模型において、新ヒッグス粒子が非常に軽いというシナリオがほぼ排除されていることを示した。 ニュートリノが粒子・反粒子の区別のないマヨラナ粒子である場合、その質量によってレプトン数が非保存となる。我々は、ニュートリノ質量が2ループで生成される新物理模型を扱い、レプトン数の非保存がLHC実験によって観測される可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニュートリノ質量生成機構に関わると期待できる粒子が実際に実験で見つかった場合に、その粒子の性質を探ることは非常に重要である。実験的に見つけやすい2重荷電ヒッグスについて、ニュートリノ質量生成機構との関連をふまえて、3重項と1重項のどちらに由来する2重荷電ヒッグスであるかの判別可能性を示すことができた。 ニュートリノ質量が、カラー量子数を持つ粒子の寄与する量子補正によって生成されるという模型について、クォークに対する実験的制限も考慮しなければならないため容易ではなかったが、現在の実験的制限を全て満たすことが可能であると示せた。また同時に、レプトン数非保存過程がLHC実験において観測されうるという可能性も示すことができた。 以上のように、ニュートリノ質量生成機構についてさまざまな角度からアプローチし、その生成機構を実験的に確認するための道筋を着実に明らかにすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ質量生成機構に関連する物理を今後も探究し、LHC実験が再稼動するまでの間に様々な可能性を整備していく。LHC実験でのシグナル観測が期待できるような模型を主に扱ってきたが、LHC実験で新物理の兆候がみられない可能性も考慮し、LHC実験では観測しづらいがILC実験ではシグナルが期待できるというような状況を与える模型も考えていきたい。 昨年度はニュートリノ振動実験によって、それまで未測定だったtheta_13がついに観測された。次に実験が目指すのはCPの破れの測定であるが、振動実験以外の手法で(LHC実験等で)CPの破れの影響を観測する可能性も、理論研究者の視点から提示していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
イタリアで開催されるSUSY2013に参加し、研究発表を行なうことを予定している。また、台湾で開催されるPASCOS2013への参加も考えている。年に2回開催される日本物理学会の会合や、毎年開催されている基礎物理学研究所やKEKでの研究会にも参加する。国内外の共同研究者たちとの打ち合わせのための旅費や、参考図書・消耗品の購入に研究費を使う。
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