2011 Fiscal Year Research-status Report
運動量分散を制御した高速3次元レーザー冷却によるクリスタルビームの生成
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23740213
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
百合 庸介 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究員 (90414565)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イオンビーム / レーザー冷却 / 空間電荷効果 / 蓄積リング / クリスタルビーム |
Research Abstract |
3次元的なレーザー冷却により超低エミッタンスイオンビームを生成するための蓄積リングのビーム光学条件を探索した。ラティスパラメータの探索においては、ビーム冷却過程の空間電荷効果を正確に計算できる分子動力学(MD)シミュレーションを実施した。系統的なシミュレーションのため、本助成金によりハイパフォーマンスコンピュータ等を購入し計算環境を整備した。 蓄積リングとしてクリスタルビームの生成・安定性条件を満たす仮想的なリングを想定し、通常の偏向電磁石からなる運動量分散のある光学系、および、電場と磁場を組み合わせた偏向要素を用いて実現できる無分散光学系の2種類を検討した。まず、レーザー冷却力を簡略化した理想的な冷却力を、リングを周回する40keVの24Mg+イオンの連続ビームに作用させ、様々な強度において結晶化できることを確認した。運動量分散のあるリングの場合、約2mの運動量分散を有する冷却セクションにおいてテーパー化した冷却力でビームの縦方向自由度を直接冷却することにより、水平方向自由度を間接的に冷却することができた。さらに、現実的な磁場強度でスキュー電磁石を励磁することにより鉛直方向自由度にも冷却効果が拡張され、冷却力が3次元化されることが分かった。一般的な冷却用レーザーにより、様々なクリスタルビームを形成するには不十分であるが、0.01オーダーのテーパー係数が実現できることも分かった。このことは、既存の加速器およびレーザー冷却の技術を用いることで連続ビームを高速に3次元冷却できる可能性を示している。 また、京都大学の蓄積リング"S-LSR"にて行われているレーザー実験グループに加わり、効率的な実験条件を分MDシミュレーションによって探索している他、グループの協力を得てより実際的な実験条件を考慮したシミュレーション研究を進める準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオンビームの3次元冷却に必要となる蓄積リングのビーム光学条件を決定することができており、予定通り進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
イオンビームのテーパーレーザー冷却過程のシミュレーションを行う予定である。高速3次元冷却を行えるようレーザーの諸条件を最適化するため、トータルパワー、スポットサイズ、周波数といった具体的なレーザーパラメータを考慮し光子の吸収・放出を模擬したモンテカルロ計算に基づくMDシミュレーションを実施する予定である。 また、運動量分散を制御した3次元冷却を行うための軌道シケインを有するリングの設計をさらに進め、MDシミュレーションによる原理検証に着手する。 MDシミュレーションの課題である長計算時間に対するひとつの解決策として、より大強度のイオンビームを想定できるシミュレーション手法の開発に向けて、マクロ粒子をMDシミュレーションに導入し計算方法の正当性を確かめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度もハイパフォーマンスコンピュータや関係するOA機器等を購入し、高速計算環境を整えていく計画である。また、最新の研究結果の発表や研究協力者との議論のため、国内外の出張を予定している。
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