2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23740219
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
吉田 誠 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (70379303)
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Keywords | 超伝導磁石 / 耐放射線 / アルミ安定化超伝導線 / ミューオン |
Research Abstract |
超伝導磁石材料の放射線耐性を調べるため、京都大学原子炉実験所にて中性子照射実験を行った。COMET実験(J-PARC E21)のパイオン捕獲ソレノイド用に試作された超伝導線からアルミ安定化材を切り出し、およそ12Kの極低温環境下で中性子を照射しながら電気抵抗を測定した。同時に超伝導線に使用される無酸素銅の照射も行った。これらの試料は、平成23年度に中性子を照射して室温で保管していたものである。平成24年度の照射では、各試料における室温アニールによる放射線損傷の回復、および繰り返し照射の効果を調べた。その結果、アルミでは、2回の中性子照射とも10の20乗neutrons/m2の速中性子に換算しておよそ0.03nOhm-mの放射線損傷が生じたが、その後の室温アニールによって極低温における残留抵抗値は照射前の状態に完全に回復した。一方、銅については、室温アニールの後でも照射損傷の5%~15%が回復できずに残り、繰り返し照射によって照射損傷が蓄積されていく事が分かった。これは、高放射線にさらされる超伝導磁石に寿命が存在することを示しており、10の22乗neutrons/m2程度の速中性子にさらされる場合は、安定化材の劣化を考慮にいれて設計する必要があることが分かった。 上記の結果を踏まえ、COMET実験(J-PARC E21)のパイオン捕獲ソレノイドの概念設計を行った。この超伝導磁石の中性子被曝量を、最大で10の21乗neutrons/m2程度に抑えるため、磁石内部に放射線遮蔽を設けられるように、常温ボアの大口径磁石とした。また、冷却伝熱用の純アルミ板についても放射線による伝熱性能の劣化を考慮し、1mmから2mmの厚い板を超伝導コイル内部に多数挿入することとした。また、セルノックス抵抗温度計にも放射線による劣化が懸念されるため、各測定点について複数の温度計を設置することとした。
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