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2011 Fiscal Year Research-status Report

光誘起相転移初期過程における超高速ダイナミクスの量子動力学的研究

Research Project

Project/Area Number 23740232
Research InstitutionUniversity of Tsukuba

Principal Investigator

前島 展也  筑波大学, 数理物質系, 助教 (90390658)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2014-03-31
Keywords光誘起相転移 / 電子格子相互作用 / 強相関電子系 / モット絶縁体
Research Abstract

本年度は、I. 1次元スピン・パイエルス物質におけるポーラロン、ソリトン状態の光学応答に関する数値的解析、II. 擬1次元ハロゲン架橋金属錯体の光誘起ダイナミクスに対する鎖間相互作用の効果に対する解析、の2点について研究を行った。I. 1次元スピン・パイエルス物質であるR-TCNQ(R=K,Rb)は、光照射により二量化が弱まり光学ギャップが減少することが既存の理論でうまく説明されていたが、光照射直後に現れるギャップ内光学吸収ピークの起源は不明なままであった。そこで、この系を記述する最も単純な模型である1次元パイエルス・ハバード模型において、光キャリア周辺の格子が断熱的に緩和した状態の光学応答を計算した。その結果、Rb-TCNQの2つのギャップ内ピークを説明するにはポーラロン状態が実現していると考えるのが最も適切であること、高エネルギー側のギャップ内ピークはスピンと電荷の結合した励起状態が起源になっていることを示した。またこの物質よりも強相関領域において、更に高エネルギー側に新奇なギャップ内ピークが、ポーラロン・ソリトン状態ともに、出現することを見出した。II. 擬1次元ハロゲン架橋パラジウム錯体 [Pd(chxn)_2]Br_2においては、平衡状態で電荷密度波(CDW)状態、光照射によって過渡的にMott絶縁体が実現することが実験的に確認されている。また、この物質は比較的強い鎖間相互作用を有することが知られているが、上述の光誘起ダイナミクスに関する今までの理論的研究は純粋な一次元系に限られていた。そこで、格子自由度が弾性的な鎖間相互作用によって結合した擬1次元的な理論模型を考え、そこに光照射を行った場合の時間発展を数値シミュレーションによって調べた。その結果、Mott絶縁体への相転移がおこる光照射強度に強い鎖間相互作用依存性があることを見出した。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初計画していた1次元スピン・パイエルス物質K-TCNQにおける光励起状態の解析については、密度行列繰り込み群と格子自由度に対する断熱近似のハイブリッド法を更に発展させ、ポーラロン状態に加えてソリトン状態に関する解析も行っている。また、K-TCNQと同種の物質群であるRb-TCNQについては、平成24年度予定だったものを繰り上げてギャップ内ピークの起源についての解析を行い、学術論文に発表した。更に、当初は予定していなかった、擬1次元ハロゲン架橋パラジウム錯体における光誘起ダイナミクスについても鎖間相互作用を含む計に対する厳密対角化に基づく解析を行った。成果報告についても、2回の学会発表を実施し、学術論文を現在準備中である。系の時間発展を解析するためのプログラム開発については、時間依存密度行列繰り込み群のプログラムを現在作成中である。時間依存ハートリーフォック方程式については、少し予定から繰り下げて24年度中に開発に着手し、遷移金属酸化物の解析に利用する予定である。

Strategy for Future Research Activity

1次元スピン・パイエルス物質R-TCNQ(K,Rb)を想定し、光照射によって生成されたキャリアが格子と結合してポーラロンやソリトン状態を形成するまでの時間発展を、主に時間依存密度行列繰り込み群を用いて解析する。それによって、電子・格子の複合ダイナミクスや光学応答スペクトルのギャップ内領域での時間変化に関する知見を得る。また、遷移金属酸化物を念頭に置いた理論模型において時間に依存する光学伝導度スペクトルの大規模計算を行い、実験で観測される光誘起超高速コヒーレント振動の起源解明を行う。1次元2軌道ハバード模型の解析を手始めにして、より多軌道な系、および複雑なスピン秩序を持つ相へと解析を拡張していく。対象となる物質・現象についてはバナジウム酸化物RVO3(Rは希土類元素)系における光誘起相転移現象を想定し、電子状態が比較的単純なLaVO3を手始めに、より複雑なYVO3へと対象を広げる。方法論については平成23年度で開発した手法の積極的な利用を想定している。単純化された1次元模型に対しては、厳密対角化や密度行列繰り込み群を用い、物質の構造を考慮した3次元模型に対しては時間依存ハートリーフォック方程式を用いる。 更には遷移金属酸化物系のハバード梯子系やspin=1ハルディン系などのスピンギャップ系にも対象を広げる。特にスピンギャップ系では今までに具体的な実験は行われていないことから、実験側への光照射実験の提案も同時に行う。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

23年度に購入予定であったワークステーションが、予定金額よりも廉価で購入できたことなどの要因により、70万円程度の繰越金が発生した。これに対し24年度は当初よりも多くの国際・国内学会に参加して成果報告を行うことを予定しているため旅費を100万円計上し、物品費に関しては、データ保存用のストレージと停電対策用の無停電電源装置を購入するため40万円とする予定である。

  • Research Products

    (3 results)

All 2012 2011

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Dimerization-induced spin-charge coupling in one-dimensional Mott insulators revealed by femtosecond reflection spectroscopy of Rb-tetracyanoquinodimethane salts2012

    • Author(s)
      H. Uemura, N. Maeshima, K. Yonemitsu, and H. Okamoto
    • Journal Title

      Phys. Rev. B

      Volume: 85 Pages: 125112_1-7

    • DOI

      10.1103/PhysRevB85.125112

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 擬一次元ハロゲン架橋金属錯体の光誘起ダイナミクスにおける鎖間相互作用の効果II2012

    • Author(s)
      齋藤陽平,前島展也,日野健一
    • Organizer
      日本物理学会 第67回年次大会
    • Place of Presentation
      関西学院大学(西宮市)
    • Year and Date
      2012年3月24日
  • [Presentation] 擬一次元ハロゲン架橋金属錯体の光誘起ダイナミクスにおける鎖間相互作用の効果2011

    • Author(s)
      齋藤陽平,前島展也,日野健一
    • Organizer
      日本物理学会 2011年秋季大会
    • Place of Presentation
      富山大学(富山市)
    • Year and Date
      2011年9月21日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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