2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740233
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
枡富 龍一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00397027)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 半導体表面 / 2次元電子系 / 低次元超伝導体 |
Research Abstract |
平成23年度前半は研究を遂行するために、超高真空下での劈開・蒸着による試料作成およびその環境を維持したままで、極低温(液体ヘリウム温度)・磁場下でのSPMと面内電気伝導測定が可能な装置を製作・性能評価を完了した。実験装置は研究目的を十分達成できるだけの性能を有し、現在、実験を開始している。 平成23年度後半からは半導体劈開表面に磁性体を吸着させた系について研究を開始した。InAsとInSb劈開表面に磁性体である鉄を吸着させた場合、表面2次元電子系の電気伝導に異常な履歴現象が現れることが申請者らの研究により明らかになった。鉄の表面被覆率が低いときは表面局在スピンが独立した散乱体として振舞うことが考えられる。一方、鉄の表面被覆率が高いときは表面局在スピン間の相互作用のため磁気秩序が期待させる。また、その場合は鉄の秩序状態は表面形態に強く依存していると思われる。従って、本研究では鉄の表面被覆率を精密に制御し、STM/STSで表面形態や電子状態、吸着物質が作る乱雑ポテンシャルによる電子散乱の機構を明らかにした上で、面内電気伝導の磁場依存性・温度依存性からスピンが関与する量子輸送現象の理解を目指した。現時点においてSTM/STSを用いた表面形態とランダウ準位の観測に成功している。平成24年度も引き続き実験を行う。 さらに2次元超伝導体の研究を行った。2次元超伝導体は基板にGaAs劈開表面を用いて、鉛やビスマスを1原子層程度蒸着して作成した。基板の乱れを極限まで少なくすることにより、1原子層という完全な2次元系において超伝導転移を観測した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は本課題の目的を実現するための装置を完成させ実験を開始することにあった。研究実績の概要にも記載したように順調に実験が行われおり予定通り研究が遂行されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
表面局在スピンと2次元電子の磁気的相互作用を明らかにした上で、薄膜磁性体をCr, Mn, Co, Niなどに拡張する。表面2次元電子の電気伝導をプローブにして、半導体表面に創製される磁気秩序状態の解明・探索を行う。 平成24年度後半は2次元超伝導体の研究を行う。2次元超伝導体は基板にGaAs劈開表面を用いて、鉛やビスマスを1原子層程度蒸着して作成する。基板の乱れを極限まで少なくした系において、乱れが2次元超伝導体に与える影響を系統的に研究する。さらに、鉛やビスマスを用いた系では強いスピン軌道相互作用により空間反転対称性が破れている。面内磁場を印加することにより空間反転対称性がない超伝導体の包括的な理解を目指す。液体ヘリウム温度では不十分な研究に関しては、上述の実験装置を用いて最適条件を見出した後、希釈冷凍機でその条件を再現し、冷凍機最低温度(~20mK)まで実験を拡張する。 得られた研究結果はその重要性を示すために、その都度学術論文雑誌への投稿、特許の取得を行う。さらに国内・国際学会での発表はもちろんのこと科学新聞、マスメディア、ホームページなどを利用し世界中に情報を発信する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に完成させた装置を用いて次年度は測定に専念する。そのため消耗品である半導体基板と液体ヘリウムの購入費が科研費の使用の大きな割合を占めている。また、研究結果はその重要性を示すために国内外の学会に参加予定のため出張費の割合が多くなっている。
|
Research Products
(3 results)