2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
枡富 龍一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00397027)
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Keywords | 半導体表面 / 2次元電子系 / 低次元超伝導体 |
Research Abstract |
平成24年度は超高真空下での劈開・蒸着による試料作成およびその環境を維持したままで、極低温(4.2K)・強磁場下での面内電気伝導測定と走査トンネル顕微鏡による表面観察が可能な装置を用い実験を行った。さらに強磁場下での面内電気伝導測定は超伝導転移温度より十分低温で物理量を測定するため、測定装置をヘリウム3温度(0.3K)に拡張した。試料には我々が初めて実現したGaAs劈開表面に作成された単原子層の超伝導鉛を使用した。この系での鉛の膜厚は2.2Å(0.8原子層)という理想的な2次元系にも関わらず、1 K程度の高い超伝導転移温度が観測された。さらに、面内磁場(14 T)を印加した実験においても超伝導転移温度の減少がほとんど見られず、新規な電子状態が実現していると考えられる。広島大学の角度分解型光電子分光を用いた実験では、シリコン上の単原子層鉛において200 meVのスピン分裂が観測されている。我々の系においても空間反転対称性を破る強いRashba効果が期待され、スピンが分裂した系が実現していると思われる。さらに、超伝導転移温度の平行磁場依存性を精密に調べることにより、輸送散乱時間を求めた。その結果、2次元のヘリカル相と言われる特殊な超伝導状態が実現していると思われる。 また、Rashbaスピン軌道相互作用は単原子層膜の構造に強く依存していると思われるため、走査トンネル顕微鏡を用いて表面構造の観測を行った。今後、試料作成温度や試料作成後のアニールにより表面構造を意図的に変化させ、スピン軌道相互作用の大きさを制御し、より詳しい超伝導発現機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は2次元超伝導体の包括的な測定を行うことが目的であった。単原子層超伝導体の輸送特性に関しては強磁場下(14テスラ)で非常に精密な測定を行い、ラッシュバスピン軌道相互作用が作り出す特異な超伝導発現機構を明らかにした。また、表面構造に関しては極低温での走査トンネル顕微鏡による観察に成功し、表面構造と面内電気伝導との関連性を議論している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては2次元超伝導体の超伝導ギャップ及び渦糸構造の観測を行う。走査トンネル分光顕微鏡をヘリウム3温度(0.3K)まで拡張する必要があり容易ではないが、超伝導ギャップの空間変調やピン止め効果が非常に弱い系における渦糸構造の理解に繋がり、革新的な研究になる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は単原子層超伝導体の超伝導ギャップおよび渦糸格子を観測するため、測定装置をヘリウム3温度に拡張する。また、ピン止め効果の弱い系での渦糸のダイナミクスの研究を行うため、高品質の基板を購入し、乱れの少ない系で測定を行う。延長した科研費助成金はこの高品質基板の購入に充てられる。
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Research Products
(6 results)