2011 Fiscal Year Research-status Report
金属単原子ワイヤーにおける電流誘起力特性の実験的解明
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23740237
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塩田 忠 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40343165)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 単原子ワイヤー / ブレークジャンクション / 電流誘起力 |
Research Abstract |
本研究は、金属単原子ワイヤーに作用する力とその電気伝導度の同時計測システムを構築し、理論的研究から金属単原子ワイヤーにおいて生じると指摘されているCurrent-induced force(電流誘起力とする)の直接観測を試み、さらにその特性および影響を及ぼす要因を実験的に明らかにすることを目的としている。本年度は、以下のように計測システムの構築に取り組んだ。本計測システムでは、ブレークジャンクション法と呼ばれる金属の微小接点を制御しながら機械的に破断・接合可能な方法によって金属単原子ワイヤーを作製し、それに作用する力に関する情報を、付加した微小チューニングフォークの共振周波数の変化として検出する。本研究において導入した周波数検出・制御装置によりチューニングフォークを駆動してその共振特性を確認した。また、共振曲線に反共振が現れた際にそれを抑制するための電気回路を検討した。さらに、原子間力顕微鏡(AFM)を用いてAFMカンチレバーの先端をチューニングフォークに接触させた際、共振周波数変化がカンチレバーのバネ定数の違いにより変化することを確認した。単原子ワイヤーの電気伝導度とチューニングフォークの周波数変化と振幅を同時計測するためにマルチチャンネル計測を行うが、チャンネル間に遅れ時間が発生するマルチプレクサ制御ではなく、リアル同時計測機能を搭載したマルチチャンネルデータ収録ボードを導入した。構築した本計測システムを用いて、Au単原子ワイヤーの電気伝導度とチューニングフォーク共振周波数変化を同時に計測した結果に基づき、単原子ワイヤーの安定性確保等計測に必要な改良点についても検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、本年度に本研究費で新たに購入するデバイスを利用して単原子ワイヤーの電気的ならびに力学的特性の同時計測システム構築を行い、単原子ワイヤーに生じるとされる電流誘起力に関する計測をAuを試料として一部行う予定であった。しかしながら、震災の影響により、本年度に購入予定であった周波数検出・制御装置の導入が少し遅くなったこと、さらには予期しない装置の一部破損などにより、構築した計測システムの改良点に関する検討・解決が残された状態となっている。本研究では、計測システムや方法論の構築が研究の成否を大きく左右するため、装置改良点の検討などには時間を費やす必要がある。したがって、このような現状であるため研究の達成度を当初計画よりもやや遅れていると判断した。現在も計測システムの構築を目指しその改良を鋭意遂行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度検討した計測システムの改良点について早急に解決し、計測システムと方法の確立を速やかに行う。改良点の解決するためにはもう少し検討が必要であり、かつ解決のためには部品の改良製作が必要である。そのため、その部品製作費を本年度から次年度に使用する予定とした。その後は、当初の研究計画に沿って、Auの単原子ワイヤーにおける電気的・力学的特性の同時計測を行い電流誘起力の実験的計測を試みる。具体的には、Au単原子ワイヤーの力学的特性の印加バイアス依存性および長さ依存性を計測し、電流誘起力の実験的検出およびその特性について既報の理論研究結果と比較しながら検討する。その上で、Au単原子ワイヤーの寿命を同時に測定するなどして、応用的にも重要と考えられる単原子ワイヤーの破断に対する電流誘起力の影響について検討する。同様の検討をPt単原子ワイヤーについても行い、AuとPtに関する計測結果を比較することにより、電気伝導特性の違いが電流誘起力に与える影響について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究推進方策にも記載したように、本年度、様々な検討により生じた計測システムの改良点については、解決のためには更なる検討に時間が必要であり、且つ構成部品を改良するか、新たに製作する必要が有ると考えられ、そのために必要と思われる費用を次年度に繰り越した。したがって、繰り越した研究費は、計測システム改良点解決のために使用する。また、当初予定の次年度計上研究費については、従来の使用計画に従って使用する予定である。すなわち、研究計画に沿った実験のために必要なAuやPtの試料購入費、チューニングフォーク、インジウムガスケット、ゴム手袋、キムワイプなどの実験消耗品費、研究成果報告のための学会出張費と参加費、として主に使用する計画である。
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