2012 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイックスにおける結晶・電気・磁気ドメインの微視的物性と可視化
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23740239
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅香 透 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80525973)
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Keywords | 誘電体 / マルチフェロイックス / 磁性体 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
マルチフェロイックスの強誘電状態での結晶構造的(変調構造・欠陥構造)、電気的(強誘電)、磁気的(磁性)ドメインの外場下での挙動を明らかにするために、透過型電子顕微鏡法により温度変化、磁場変化、電場変化の下、それらドメイン構造のその場観察を行った。まず、室温でマルチフェロイック物性を示すヘキサゴナルフェライトについて、らせん磁気秩序に起因したと考えられる変調構造を見出した。この変調構造によるドメインの観察を試みた結果、明瞭なドメイン境界は存在せず、系全体にわたって均一に変調構造が生じていることが分かった。 また、電場印加その場観察用試料の作製を行い、ヘキサフェライト多結晶および単結晶試料に対する電場印加その場観察を行った。その結果、ヘキサフェライトの観察においては電圧印加による大きな電場が電子顕微鏡像に影響を与え、定量的な解析に耐えうるデータを取得することが難しいということが分かった。現在、上記の電場印加その場観察技法の改良を行っている。 走査電子線回折法による強誘電・磁性ドメイン観察手法を開発し、ヘキサゴナルフェライトの強誘電・磁性ドメインを観察した。しかしながら、計測されるデータは電場と磁場の両方の寄与からくるものであり、その分離は困難であることが分かった。本手法は強誘電と強磁性が共存していない系では有効である。 関連物質として二重ペロブスカイトコバルト酸化物について、温度変化での電子回折により結晶構造相転移を見出した。さらにこの構造相転移における結晶学的ドメインの変化をその場観察し、その構造相転移の特徴を明らかにした。また、磁場印加その場電子回折により、磁場誘起構造相転移を観測した。この磁場誘起構造相転移は常磁性状態(磁気無秩序状態)で起こり、上記のヘキサフェライトでの磁場誘起構造相転移がらせん磁気状態(磁気秩序状態)で起こるのとは対照的である。
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