2013 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能バルク敏感光電子分光によるd電子系化合物の電子相関と準粒子状態の研究
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23740244
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
山崎 篤志 甲南大学, 理工学部, 准教授 (50397775)
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Keywords | 光電子分光 / バルク敏感 / 鉄系超伝導体 / d電子系 / モット絶縁体 / スピン軌道相互作用 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
最終年度には,鉄系超伝導体母物質であるTlFe2Se2と,キャリアドープにより超伝導発現が期待されているペロブスカイト型イリジウム酸化物Sr2IrO4,Ba2IrO4に対して,温度可変・極低エネルギー励起角度分解光電子分光実験を行った.これらの化合物において物性を決定づけているのはFe3dとIr5d電子状態であり,主量子数が違いながらも,ともに絶縁化しているこれらの化合物の電子構造について共通点・相違点を見いだすことが本研究の大きな目的である.両者は一般に,モット絶縁体と言われているが,TlFe2Se2に対しての実験で,50-300Kの温度領域でフェルミ準位近傍の光電子放出強度が大きく変化し,低温でギャップが発達している様子が明らかになった.このような振る舞いは,この系の絶縁化にスレーター的なメカニズムも関与していることを示唆している.一方,硬X線励起の価電子帯光電子スペクトルから,反強磁性相互作用が系の絶縁化に支配的であると結論づけたイリジウム酸化物では,温度変化によるギャップ構造の変化は観測されなかった.また,Ir4f内殻光電子スペクトルの解析から,バルクでは他のIr化合物とは明らかに異なる特徴的な電荷移動型スペクトル構造を持つことを明らかにした.この構造は電子相関の重要性を示しており,光電子分光実験からスレーター,モット両方の相互作用が系の絶縁性に寄与していることを明らかにすることが可能であることを示した. 研究期間全体を通して,5d電子系化合物における強いスピン軌道相互作用が実際に系の物性に重要な寄与をしている一方で,広くモット絶縁体だと言われている3d・5d電子系化合物においても,反強磁性相互作用が極めて重要な役割を果たしていることが明らかになった.一方,FeSeのようにいったん金属化してしまうと,フェルミ液体として電子構造を記述可能であることがわかる.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Bulk nature of layered perovskite iridates beyond the Mott scenario : An approach from bulk sensitive photoemission study2014
Author(s)
A. Yamasaki, S. Tachibana, H. Fujwara, A. Higashiya, A. Irizawa, O. Kirilmaz, M. Sing, H. Yoshida, H. Okabe, M. Isobe, R. Claessen, T. Ishikawa, S. Imada, A. Sekiyama, and S. Suga ほか計27名
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Journal Title
Phys. Rev. B (Rapid Communications)
Volume: 89
Pages: 121111-1-5
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Spin-Orbit-Coupling-Induced jeff States in Perovskite Iridates Studied by Photoemission Spectroscopy2014
Author(s)
A. Yamasaki, O. Kirilmaz, A. Irizawa, A. Higashiya, T. Muro, H. Fujiwara, F. Pfaff, P. Schriderer, J. Gabel, M. Sing, M. Yabashi, K. Tamasaku, A. Hloslovskyy, H. Okabe, H. Yoshida, M. Isobe, J. Akimitsu, W. Drube, T. Ishikawa, S. Imada, A. Sekiyama, R. Claessen, and S. Suga
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Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn. (Supplement)
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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[Journal Article] Direct k-Space Mapping of the Electronic Structure in an Oxide-Oxide Interface2013
Author(s)
G. Berner, M. Sing, H. Fujiwara, A. Yasui, Y. Saitoh, A. Yamasaki, Y. Nishitani, A. Sekiyama, N. Pavlenko, T. Kopp, C. Richter, J. Mannhart, S. Suga, and R. Claessen
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Journal Title
Phys. Rev. Lett
Volume: 110
Pages: 247601-1-5
DOI
Peer Reviewed
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