2011 Fiscal Year Annual Research Report
非調和熱振動がもたらす新奇物性の中性子散乱による研究
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23740247
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
金子 耕士 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (30370381)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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Keywords | 物性実験 / 量子ビーム / 強相関電子系 / 低温物性 / 非調和熱振動 / ラットリング |
Research Abstract |
大きめのカゴ状構造に内包されたイオンが示す、大振幅の非調和振動と、それが引き起こす新奇物性について、単結晶中性子構造解析を中心に、その詳細な描像を明らかにすることを目指していた。しかし今年度は、震災の影響により、研究の主軸として考えていた、研究炉原子炉JRR-3及びパルス中性子源J-PARC/MLFともに停止してしまったため、国内での中性子散乱実験実施が不可能になった。そのため、海外施設を用いた中性子散乱実験及び放射光X線非弾性散乱実験へと切り替えて、研究を進めた。まず、これまでに顕著な大振幅非調和熱振動を示すことを明らかにしたPrOs_4Sb_<12>について、非調和振動が誘起する動的応答を探索するため、高効率中性子回折計を用いた実験を行った。その結果、温度上昇に伴い振幅が大きくなるにつれて、特定の格子点周りに散漫散乱状の散乱強度の増加を見出した。この散乱は構造因子の大きい格子点周りに観測されている事から、格子歪みとの結合が考えられ、この歪みを通じて物性に影響を及ぼしている可能性がある。この結果に基づき、非弾性X線散乱実験により、フォノンのゾーン依存性について調べた。その結果、音響フォノンとゲストモードの混成効果がゾーンにより大きく異なることを明らかにした。実験結果から、非調和性とゲスト-格子相互作用及び物性との関連を明らかにするため、定量的な解析を進めている。今回の結果から、スクッテルダイトにおける非調和熱振動が及ぼす影響として、ゲストモードのソフト化だけではなく、音響フォノンとの混成効果の重要性を明らかにすることが出来た。より調和的だと考えているPrRu4Sb12やパイロクロア、クラスレート等の関連化合物へと展開していくことで、非調和振動の発現条件、さらには物性発現機構の解明へと迫っていくことを計画している。
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