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2011 Fiscal Year Research-status Report

微視的測定手段による上部臨界磁場近傍で実現する異常な超伝導状態の研究

Research Project

Project/Area Number 23740249
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

井原 慶彦  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80598491)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords強相関系 / 超伝導 / 核磁気共鳴 / 有機導体
Research Abstract

本研究は、パウリ限界を超える上部臨界磁場を持つ超伝導体において、上部臨界磁場近傍で実現していると考えられている異常な超伝導状態(FFLO状態)の存在、及び性質を微視的測定手段である核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて明らかにすることを目的としている。FFLO状態が示唆されている異方的超伝導体では上部臨界磁場の角度依存性が大きいため、単結晶を用いて磁場印加角度を制御した測定を行う必要がある。従って、本研究の初年度において横磁場超伝導磁石を用いたNMR測定システムの開発を行った。これまでに3 Kまでの冷却及び6 Tまでの磁場印加を実現している。さらに本システムには2 GPa程度の圧力が印加できるクランプセルも搭載できるため温度、磁場強度、磁場角度、圧力と様々なパラメーターの制御が可能になり、極限状態で実現する異常な超伝導状態の研究を遂行するための測定装置の準備が完了した。2年目においてこれらの測定装置を駆使した実験を遂行する予定である。 また、所属研究室において非常に高い上部臨界磁場を持つ有機超伝導体beta''-(BEDT-TTF)4[(H3O)Ga(C2O4)3]C6H5NO2の単結晶育成に成功したためこの物質においてもNMR測定を開始した。これまでに低磁場での測定からこの物質で実現している超伝導はスピン1重項状態を取っており、パウリ限界を超える高磁場ではFFLO状態が実現している可能性を指摘した。この有機超伝導体は常圧で10 K程度の比較的高い超伝導転移温度を持っていること、また上部臨界磁場がパウリ限界を超える磁場印加角度が非常に広いことなどの測定上の利点を持っており、詳細にFFLO状態を調べることが出来ると考えられる。平成23年度に行った低磁場NMR測定の結果をまとめた論文は現在査読中である。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

当初の計画では、研究の初年度において主に磁場印加角度を正確に制御できる測定装置の開発を行う予定であった。実際平成23年度中に横磁場超伝導磁石を用いた磁場角度を制御可能なNMR測定システムの開発を完了し、次年度への準備が整っている。また、研究の2年目に予定していた圧力印加セルが搭載できるNMRプローブの開発もすでに完了しており、次年度は圧力、磁場印加角度といった様々なパラメーターを制御した測定に円滑に移行できる。 次年度へ向けての装置開発を完了したうえで、さらに新たにFFLO状態が実現している可能性がある有機超伝導体の単結晶育成に成功したため、この物質に対しても測定を開始し、すでに低磁場における測定を終了している。これまでにこの有機超伝導物質では電気抵抗測定により非常に高い上部臨界磁場を持つことがわかっていたが、その超伝導状態の性質についてはわかっていなかった。本研究により、低磁場ではスピン1重項状態が実現していることが明らかになったため、高磁場ではFFLO状態が実現している可能性が高まり、次年度の高磁場NMR測定によりその詳細を明らかに出来ると期待される。

Strategy for Future Research Activity

本研究の初年度に行った研究により非常に高い上部臨界磁場を示す有機超伝導体beta''-(BEDT-TTF)4[(H3O)Ga(C2O4)3]C6H5NO2においてFFLO状態が実現している可能性を示した。本研究課題であるFFLO状態の性質を解明するためには、様々な物質において実現する異常な磁場中超伝導状態の性質を明らかにすることが必要であり、この新奇物質において上部臨界磁場近傍の高磁場でNMR測定を行うことが急務である。従って本研究の2年目においてLNCMI-Grenoble 等の高磁場発生装置共同利用施設を活用することで超高磁場を印加しNMR測定を実施する。また、当初の計画通りCeCoIn5の圧力下NMR測定も並行して実施する。これまでのところ圧力下NMR測定は3 K程度まで行うことが出来るようになったが、CeCoIn5の超伝導状態は希釈冷凍機温度で現れるため、圧力セルを希釈冷凍機に搭載する必要がある。そこで、次年度において3 Kまでの予備実験を遂行するとともに、希釈冷凍機に圧力セルを搭載できるように改造し極低温までの測定を行う。圧力を印加することにより常圧でのFFLO状態に影響を与えていた反強磁性相が抑制されると考えられるので、圧力下において3 Kまでの常伝導状態の測定により磁気励起が抑制されていることを確認する。さらに同圧力で超伝導転移温度以下の極低温度までNMR測定を行い、隣接する反強磁性相による影響を排除した純粋なFFLO状態の性質を明らかにする。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成23年度中に納品したが、支払いが次年度以降になったため高周波測定装置用電子部品、及び低温、排気装置に使用する消耗品等の支払いに使用する。

  • Research Products

    (4 results)

All 2012 2011

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Superconductivity induced by longitudinal ferromangnetic fluctuations in UCoGe2012

    • Author(s)
      T. hattori, Y. Ihara, Y. Nakai, K. Ishida, Y. Tada, S. Fujimoto, N. Kawakami, E. Osaki, K. Deguchi, N.K. Sato, I. Satoh
    • Journal Title

      Physical Review Letters

      Volume: 108 Pages: -

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.108.060403

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Spin dytnamics at the Mott transition an in the metallic state of the Cs3C60 superconducting phases2011

    • Author(s)
      Y. Ihara, H. Alloul, P. Wzietek, D. Pontiroli, M. Mazzani, M. Ricco
    • Journal Title

      EPL

      Volume: 94 Pages: -

    • DOI

      10.1209/0295-5075/94/37007

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 13C NMRによるbeta''-(BEDT-TTF)4[(H3O)Ga(C2O4)3]C6H5NO2の超伝導直上に見られる異常金属状態の研究2012

    • Author(s)
      関春海、井原慶彦、河本充司
    • Organizer
      日本物理学会第67回年次大会
    • Place of Presentation
      関西学院大学(兵庫県)
    • Year and Date
      2012年3月26日
  • [Presentation] 13C NMRによるbeta''-(BEDT-TTF)4[(H3O)Ga(C2O4)3]C6H5NO2の電荷秩序と超伝導の研究2011

    • Author(s)
      関春海、井原慶彦、河本充司
    • Organizer
      日本物理学会2011年秋季大会
    • Place of Presentation
      富山大学(富山県)
    • Year and Date
      2011年9月24日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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