2012 Fiscal Year Annual Research Report
微視的測定手段による上部臨界磁場近傍で実現する異常な超伝導状態の研究
Project/Area Number |
23740249
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
井原 慶彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80598491)
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Keywords | 超伝導 / FFLO状態 / 核磁気共鳴 |
Research Abstract |
平成24年度は近年新たに見つかった、パウリ限界磁場を遥かに超える上部臨界磁場を持つ有機超伝導体beta-(BEDT-TTF)4[(H3O)Ga(C2O4)3]C6H5NO2の片側13C置換体に対して13C NMR測定を行いFFLO状態が実現している可能性を探った。試料サイズが小さいため低磁場での測定が困難であったが、サブミリメートルサイズのコイルを用いることで低温まで精度よくNMRスペクトルを測定し、低磁場ではスピン1重項状態が実現していることを確実にした。また、同測定により超伝導転移直上で電荷異常が起こっていることを発見し、電荷不安定性近傍の揺らぎが超伝導と関連している可能性を指摘した。これらの結果は国内外の学会において発表した。また、現在日本物理学会誌に投稿中である。 本研究対象であるFFLO状態は磁気的相互作用により分裂したフェルミ面上で起こる異常な超伝導状態であるが、一方で電気的相互作用により分裂したフェルミ面上で起こる超伝導状態もFFLO状態との比較から興味深い。そこで、電気的相互作用によりフェルミ面が分裂していると考えられている空間反転対称性を持たない超伝導体Mo3Al2CにおいてMo NMR測定を行い、超伝導状態においてもスピン帯磁率の減少が小さいスピン3重項状態、または1重項状態と3重項状態の量子力学的重ね合わせ状態が実現していることを明らかにした。この結果は紀要に公表した。
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