2011 Fiscal Year Research-status Report
ディラック電子系に対するトンネル分光法の開発と適用
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23740255
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
近藤 隆祐 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (60302824)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ディラック電子系 / トポロジカル絶縁体 / 有機導体 / トンネル分光 |
Research Abstract |
本研究は、表面ディラック電子系を持つトポロジカル絶縁体Bi2Se3と、静水圧力下において、傾いたディラック・コーン型のエネルギー分散を持つとされる擬二次元有機導体α-(BEDT-TTF)2I3に対して、磁場下トンネル分光測定法を開発・適用することにより、それぞれの物質のディラック電子系の特徴を明らかにすることを目的としている。具体的に遂行する内容は、良質なトポロジカル絶縁体Bi2Se3を作成すること、及び、それぞれの物質に対して、適切なトンネル分光測定法を開発・適用することである。初年度は、主に、トポロジカル絶縁体Bi2Se3のキャリア制御された良質試料を作成することを目的とした研究を進めた。また、Bi2Se3の層間に銅原子が導入された超伝導体、CuxBi2Se3についても、良質の試料作製を目的とした研究を行った。通例、Bi2Se3は石英管に原料を真空封入し、昇温によって融解後、徐冷することによって作成される。しかし、化学量論比かつ真空雰囲気下では、Se欠陥によって、電子がドープされ、フェルミ準位がバンドギャップ内から外れてしまうことが知られている。この補償を行うため、結晶中+3価状態のBiの代わりに、Ca、Mgなどの+2価状態を取る原子のドープ効果及びに、真空雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換することの効果を調べた。上に述べた元素をドープすることによって、伝導を担うキャリアがホールの試料を作成できた。また、不活性ガスの導入によって、キャリア数の変化から見積もって、Se欠陥の量が一ケタ程度減少することも明らかにした。超伝導体CuxBi2Se3についても、製法を工夫することにより、超伝導状態においてゼロ抵抗の出る試料を再現性良く作れるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度途中の研究代表者の所属研究機関の異動に伴い、前所属機関での研究を止め、新所属機関において研究環境の立ち上げを行わねばならなかったため、遅れている。具体的には、異動先の研究機関において試料作製設備を立ち上げる必要が生じたこと、また、当初の計画では、初年度後半に開始する予定であった、低温におけるトンネル分光測定の開発を始めることができなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
"現在までの達成度"のところで述べたように、異動に伴う研究中断があったため、申請書に記した予定より遅れているものの、基本方針に大きな変更はない。今年度から、トポロジカル絶縁体及び有機導体の両方の試料を用いた、トンネル分光法の開発を始める。また、試料作製については、引き続き、トポロジカル絶縁体のキャリア濃度のより精密な制御を目指すとともに、時間反転対称性の破れを制御するために、磁性不純物をドープした試料の作成を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の異動によって研究環境が変化したため、これに対応した研究費の使用が必要である。主な変更点として、異動先における試料作製の設備の立ち上げに係る費用の発生、及び、寒剤価格の違い等が挙げられるが、状況に応じて対応する。
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Research Products
(1 results)