2011 Fiscal Year Research-status Report
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23740258
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 一匡 東京大学, 物性研究所, 助教 (30456199)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / フラストレーション / 近藤効果 |
Research Abstract |
幾何学的なフラストレーションから生じる非磁性自由度であるカイラリティと伝導電子との相互作用が生み出す近藤効果について知見をえるために、四面体配置局在電子模型(四不純物アンダーソン模型)の解析的および数値計算を行った。研究の結果、近藤効果と超交換相互作用の競合により、二つの相が安定化される事がわかった。一つはカイラリティがdecoupleした相であり、もう一つは局所フェルミ液体相である。前者については、Underscreened 近藤効果と非常に類似しているが、その漸近的振る舞いは異なる。摂動的繰り込み群を用いた言葉では、これらは1ループの寄与が厳密にゼロであり、2ループの寄与が主要項であることに起因する。1ループの寄与が厳密にゼロであるということは、カイラリティと結合する伝導電子の自由度がその軌道密度であり、それらは互いに「可換」であることの帰結である。また、これらの結果はより正確な数値繰り込み群の結果と一致した。これらの安定相の境界を連続時間モンテカルロ法で詳細に調べた結果、臨界点付近では非フェルミ液体的な振る舞いが発現し、例えば電子グリーン関数は局在から遍歴的に遷移し、自己エネルギーの振動数依存性は"marginal"フェルミ液体的な依存性を示す事を明らかにした。これらの結果は二つの重要な知見を与える。一つは四面体カイラリティの近藤効果の振る舞いであり、もう一つは存在する二つの相のあいだに発現する非フェルミ液体の存在の発見である。(これらの成果を2011年8月29日ー9月3日にケンブリッジ、UKで開催されたStrongly Correlated Electron Systemsで発表した。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値解析において、臨界点近傍の高精度なデータを得ることに多大な時間を費やす事となった。そのため、現在(平成24年4月時点)において当該研究のレター論文を投稿することができないでいる点は反省点である。ただし、進捗状況という観点では、カイラリティ相のUnderscreened近藤効果の理解が当初予想していたよりも深められ、概ね良好であると考える。レター論文に関しても、4月中には投稿できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
4月中は前年度の成果の論文投稿準備にあてることになるが、5月から当初の計画に従って研究を行いたいと考えている。CeCu2Si2等の重い電子系超伝導の微視的理論を構築することを目標に、自己無撞着揺らぎ理論を二軌道アンダーソン模型に適用する。定式化およびプログラム作成は当初の予定から1ヶ月ほど遅らせ、7月をめどに完成させる。その後本計算に半年程度時間をとり、2013年3月の第68回日本物理学会にて発表する予定である。同時に、2013年1-3月には研究成果をまとめ、論文を投稿する予定である。上記のテーマが思うように進まない場合、25、26年度計画に挙げているU系化合物に関するフェルミ面のトポロジー変化の解析や、そのスピン三重項超伝導状態の研究を行う予定である。特に動的平均場を基礎としている25年度の研究については、それほど困難な問題はないと考えているので、少々の遅れは取り戻す事が可能であると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度予算は前年度の予算に比べてかなり抑えられているため、主な使用目的は旅費と論文投稿費である。旅費は日本物理学会および国内で開催される関連分野の研究会に参加する為に使用する。論文はJournal of Physical Society of Japnに投稿する際に投稿料として支払う予定である。
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Research Products
(3 results)