2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23740258
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 一匡 東京大学, 物性研究所, 助教 (30456199)
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Keywords | 四極子秩序 / スピン波 |
Research Abstract |
本年度は昨年度の報告書の今後の計画に記した予備的課題であるPr系1-2-20化合物における四極子自由度の問題に集中することとなった。これは本年度における急速な実験結果の進捗状況を鑑みて、早急に理論的考察をするべきであると判断したためである。ミニマルな四極子自由度の秩序について、群論的考察、平均場近似計算、スピン波励起等を詳細に計算した。平均場近似による相図は概ね実験で得られているものに対応するものが得られ、用いている模型の素性の良さを示すこととなった。この結果からのずれを説明するには群論的考察から得られた現実の系において存在が許される相互作用を考慮する必要がある。またスピン波励起の磁場依存性は、最近得られたゼーベック係数の異常と関係していることを示唆する結果となり、非常に興味深い。これらの他に、立方晶点群における四極子秩序の一般論を構築することにも成功した。特に、強四極子転移は必然的に一次転移にならざるを得ないことを指摘した。これらの結果は3月にJournal of the Physical Society of Japanに掲載された。 また上記の研究の他に、一次元朝永ラッティンジャー液体中の非磁性不純物問題に対する連続時間モンテカルロ法の開発にも成功した。この手法を用いれば、2次元トポロジカル絶縁体のエッジ中の近藤問題等が解析可能であり、今後のさらなる研究成果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予備的な課題ではあったが、詳細な解析を行い19ページにおよぶ長論文を提出及び出版できたのは非常に良かった点である。当初はPr-1-2-20系における詳細な解析を構想していたが、研究を進めるなかで、四極子自由度の秩序に関する一般論にまで議論を拡張することができたのは予期せぬ成果であったといえる。また、今後の実験研究に対して様々な角度からの提言ができたこともこの自己評価の理由である。 また、一次元朝永ラッティンジャー液体中の非磁性不純物問題に対する連続時間モンテカルロ法の開発は当初の計画にはなかったものの、初年度の四面体近藤効果の解析で用いた手法を上手く適応することが出来ることに気づいた為開発を行い、結果、非常に重要な成果になった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、当初の計画の「二軌道アンダーソン模型におけるフェルミ面転移」および、「強磁性臨界点のモンテカルロ解析」を行う予定である。前者に関しては、プログラム開発に1ヶ月、臨界点近傍のパラメータ探索に二ヶ月ほど必要であると考えている。9月をめどに数値計算のデータを整理して論文執筆に取りかかりたいと考えている。後者に関しても同程度の期間を設定し、2月頃をめどに論文執筆に取りかかりたい。 研究費の使途としては、二つの課題を迅速に進める為にワークステーションを数台購入する予定である。その他は論文投稿費および学会参加費に使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度の負荷の高い数値計算に備えるため、出来る限り最新のワークステーションを購入することを念頭に予算を少量繰り越すことにしたため。 ワークステーションを購入する為の費用の補助として用いる予定である。
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