2012 Fiscal Year Annual Research Report
多変数変分モンテカルロ法を用いた鉄系超伝導体の超伝導機構の解明
Project/Area Number |
23740261
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三澤 貴宏 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10582687)
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Keywords | 高温超伝導体 / 第一原理計算 / 強相関電子系 / 鉄系超伝導体 |
Research Abstract |
鉄系超伝導体の第一原理有効模型の解析を昨年度に引き続きおこなった。特にLaFeAsO以外の鉄系超伝導体の解析を行い、我々の用いている第一原理ダウンフォールディング法の検証を行うとともに、LaFeAsOにおける超伝導発現可能性の系統的な計算を行った。従来では精密な理論解析を行うのが困難だった、強相関かつ多軌道(5軌道)という系に対して、量子揺らぎ及び空間相関を考慮した高精度な計算を実行した。 (1) FeTeにおける磁気秩序の解明 鉄系超伝導体の母物質の多くでストライプ秩序と呼ばれる磁気秩序相が実現しているが、FeTeではバイコリニアという他の物質とは異なる磁気秩序が実現している。このFeTeでの特異な磁気秩序の微視的な起源を第一原理有効模型を解析することで明らかにした。その結果、相互作用、とくにフント結合の大きさがバイコリニアの安定性と密接に関わっていることを明らかにした。さらに、鉄系超伝導体の有効模型は5軌道の自由度があるが、鉄系超伝導体を通じて磁性を中心的に担っているのは特定の一つの軌道(X2-Y2)であり、この軌道の相関効果が磁性パターンを制御していることに明らかにした。これは鉄系超伝導体における磁気秩序の多彩さを統一的に理解する基盤を与えたことになる。 (2) 超伝導相の安定性への吟味 LaFeAsOの有効模型について昨年度までに電子濃度、相互作用を系統的に変化させた大域的な相図を完成させた。今年度は実験と直接的に対応する電子ドープの領域での超伝導相の発現可能性を吟味した。系のサイズを5軌道かつ10×10のサイズ、変分パラメータの数にして10000を超える計算を行った。その結果、10-30%のドーピングで超伝導の安定性が最大になることを明らかにした。
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