2012 Fiscal Year Research-status Report
1次元細孔中の液体3Heを用いた朝永‐ラッティンジャー液体の研究
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23740264
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
谷口 淳子 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (70377018)
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Keywords | 1次元量子系 / 朝永∸ラッティンジャー液体 / ヘリウム3 / ヘリウム4 |
Research Abstract |
本研究課題『1次元細孔中の液体3Heを用いた朝永‐ラッティンジャー(TL)液体の研究』の目的は,細孔中3Heの比熱・帯磁率を測定し,バルクの液体3Heの振る舞いと比較することにより,1次元3Heの性質を明らかにすることである.初年度に1次元性が顕著になる孔径を調べるために行っていた1次元細孔中液体4Heの実験において,超流動性とTL液体との関連を示唆する重要な実験結果が得られた.そこで,2年目の平成24年度は,3Heの実験準備と並行して,4Heの超流動の研究を行った.超流動の周波数依存を複数の圧力において測定し,加圧するにつれて周波数依存が大きくなることを明らかにした.この周波数依存から実験的にラッティンジャーパラメータを求めた.その圧力依存は理論的予想と定性的に一致し,TL液体が細孔中で実現している可能性を示している.液体Heの系でTL液体を示唆する実験結果が得られたのは初めてで,早急にその性質を詳細に明らかにする必要がある.特にハードコア相互作用が重要な系において,原子の何倍程度の孔径でTL液体が現れるのか,また孔径によってその性質がどのように変化するのかに,理論面から興味が持たれ,モンテカルロ計算などが行われはじめている.そこで,動的超流動の孔径依存を調べるための実験準備を始めている. 3Heに関しては,4HeでTL液体実現を示唆する結果が得られている孔径2.8nmの試料を用いて,NMR測定系の構築を行った.さらに,マグネットを取り付けるために希釈冷凍機の改造を行った.平成25年度に測定を開始する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1次元細孔中4Heの超流動の周波数依存においてTL液体を示唆するような振舞が観測されたことから,複数の圧力下において周波数依存の測定を行い,加圧により周波数依存が強まることを明らかにした.その振る舞いはTL液体モデルを基にした理論の予想と定性的に一致した.これは,液体Heの系でTL液体実現を示唆する初めての実験事実であり,非常に重要な知見である.その詳細を明らかにすべく,動的超流動の孔径依存を測定するための準備も進めている. 3He系においては,比熱測定のために測定試料‐希釈冷凍機間の熱流をより高精度に制御するためにコールドバルブの開発を行ってきたが,まだ低温での動作まで至っていない.今後は,熱流の制御の代わりに,測温や比熱の測定法などの改良により必要な感度を達成することも検討する必要がある. また,帯磁率測定については,低温部の測定系の構築を行った.磁場の均一度は十分なものが得られている,また,マグネットを取り付けるための冷凍機の改造も終えた. 総合的に見て,おおむね順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
1次元細孔中の超流動とTL液体との関係を示唆する重要な結果が出ているので,25年度も3Heの実験と並行して4Heの超流動の実験も推し進めていく必要がある.4Heの系については,TL液体が実現する孔径領域を明らかにするため,4Heの動的超流動の孔径依存の実験を行う.3Heの系については,孔径2.8 nmの試料を用いて,帯磁率及び比熱の測定を行う.4Heの超流動の結果やカーボンナノチューブにおける緩和現象の実験研究から,TL液体の特徴は緩和時間の観測周波数や温度に対するべき異常として現れる可能性がある.そこで,磁気的緩和を複数の観測周波数で測定することを予定している.また,2.8 nm細孔中液体4Heの比熱測定から,BECのような状態が現れる,いわゆる縮退温度よりもかなり低温でTL液体を示唆するような超流動の振る舞いが現れることが明らかになっている.3Heのエネルギー状態と1次元的特徴が現れる温度との関係に注目して,比熱測定を進めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし.
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Research Products
(6 results)